海から神戸を見る視点
「港神戸残照」と名付けられた山本隆彦さんの美しい作品。海と山に挟まれた港町・神戸の特長がよく表現されています。これはポートピアホテルから西北を撮影したそうです。遊覧船やMOSAIC、菊水山も見えている。今ではすっかりおなじみになったこの風景、じつは30年前までは見ることができなかった、というのはご存じでしょうか? 人工島ポートアイランドがつくられる以前は、外国から船で帰ってきた人しか見ることができなかった海からの神戸。いわばある種の特権だったのです。
神戸の人は海を見て、海の向こうに思いをはせて育ったものです。つまり陸から海を見る視点。その風景は南を眺めるわけですから、逆光の景色。とくに太陽が低い冬場は、いつもキラキラと輝いている。だからキラキラの先にある外国への憧れが否応なくふくらんでいく。そんな眺望が良くも悪くも神戸人を作り上げる。もちろん神戸に限らず、人間は好奇心にあふれているから、海のそばの人たちは海の向こうへあこがれ、山の近くの人たちは山の向こうに夢を抱いた。それが世界共通の日常です。その逆の行為、海からわが町を、あるいは山の上からわが村を眺めることは、自分たちを客観視することなのではないでしょうか。内から外を見る日常から、外から内を見る新たな習慣へ。そうすることで今まで見えなかったものが見えてくる。考えていなかったことが思い浮かぶ。山本さんの見た神戸は、そんな多面的な考え方の大切さを教えてくれる。
ハクモクレンやコブシが満開の神戸・元町、ギャラリーPAXREXでご覧ください。
ギャラリーPAXREX
山本隆彦 写真展 「ヒカリの軌跡」
3月24日(土)~4月15日(日)
11時~19時 水曜定休
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