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2012年3月

2012年3月31日 (土)

海から神戸を見る視点

Photo
 「港神戸残照」と名付けられた山本隆彦さんの美しい作品。海と山に挟まれた港町・神戸の特長がよく表現されています。これはポートピアホテルから西北を撮影したそうです。遊覧船やMOSAIC、菊水山も見えている。今ではすっかりおなじみになったこの風景、じつは30年前までは見ることができなかった、というのはご存じでしょうか? 人工島ポートアイランドがつくられる以前は、外国から船で帰ってきた人しか見ることができなかった海からの神戸。いわばある種の特権だったのです。
 神戸の人は海を見て、海の向こうに思いをはせて育ったものです。つまり陸から海を見る視点。その風景は南を眺めるわけですから、逆光の景色。とくに太陽が低い冬場は、いつもキラキラと輝いている。だからキラキラの先にある外国への憧れが否応なくふくらんでいく。そんな眺望が良くも悪くも神戸人を作り上げる。もちろん神戸に限らず、人間は好奇心にあふれているから、海のそばの人たちは海の向こうへあこがれ、山の近くの人たちは山の向こうに夢を抱いた。それが世界共通の日常です。その逆の行為、海からわが町を、あるいは山の上からわが村を眺めることは、自分たちを客観視することなのではないでしょうか。内から外を見る日常から、外から内を見る新たな習慣へ。そうすることで今まで見えなかったものが見えてくる。考えていなかったことが思い浮かぶ。山本さんの見た神戸は、そんな多面的な考え方の大切さを教えてくれる。
 ハクモクレンやコブシが満開の神戸・元町、ギャラリーPAXREXでご覧ください。

ギャラリーPAXREX
山本隆彦 写真展 「ヒカリの軌跡」
3月24日(土)~4月15日(日)
11時~19時 水曜定休

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2012年3月28日 (水)

浜のミサンガ「環」のこと

Img_33041
 三陸の漁村のお母さんたちが、漁網の糸を使ってミサンガを作って販売しています。販売価格から経費を差し引いた残りが、彼女たちの収入になる仕組み。テレビや新聞でも取り上げられているのでご存知の方もいらっしゃるでしょう。先日このミサンガを三宮そごうでゲットしました。たとえ小さなことでも何かのお役にたてれば、という思いで。
 いわて三陸・住田 1188 番目につくりました、と製造番号が書かれた小さな紙に印刷されていた文章をご紹介します。

      このミサンガ「環(たまき)」は、
      浜の女性たちの手仕事です。

      復興の願いを込めて、
      漁網を使ってくつりました。

      三陸を支援してくださる証として
      浜ごとの製造番号を
      表示してお届けいたします。

 浜のミサンガ「環」は、下記のサイトからネットで購入できます。また大阪・南船場にある「青森・岩手・秋田きた東北発見プラザ jengo(ジェンゴ)」でも買えるそうなので、興味を持たれた方はぜひどうぞ。

三陸に仕事を!プロジェクト

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2012年3月25日 (日)

玄関ポスターはモンドリアン?

Poster_022_2
 PAXREXが入る第2日新ビルの一階玄関に、展覧会のPRを兼ねて看板代わりに出しているポスター。山本隆彦さんの「ヒカリの軌跡」展では、ご覧のようにまったく新しい絵画表現を生み出したモンドリアンに敬意を表したデザインです。山本さんが写真の世界で起こしている革新は、時代の常識を超えたところを目指す、ちょっとオーバーに言えば近代絵画におけるモンドリアンのようだから。そんな気持ちをデザイナーさんがとても素敵なポスターに仕上げてくれた、というわけです。もちろん山本作品はモンドリアンが提唱した純粋抽象とは違いますが・・・。
 ここで使用した3つの作品は、撮影した場所も制作した時期もさまざまです。でも共通するのは、見たこともない新しいイメージや今までの常識を覆す美しさを追求する熱意と情熱。この展覧会をご覧いただくと、まだまだ写真というジャンルに表現の可能性が広がっていることがおわかりいただけるお思います。カメラを記録のための道具として使うドキュメンタリーや報道分野の写真に偏重していた日本でも、やっとアートの一手法として写真を使う時代がやって来ました。

ギャラリーPAXREX
山本隆彦 写真展 「ヒカリの軌跡」
3月24日(土)~4月15日(日)
11時~19時 水曜定休

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2012年3月22日 (木)

まもなく「ヒカリの軌跡」展です

Infocard_031_egara
 24日(土)から、山本隆彦 写真展「ヒカリの軌跡」がスタートします。こちらを凝視するマサイの女、獲物を狙う水鳥、暮れてゆく神戸の街・・・。山本さんが現実を写す道具であるカメラを使って表現する作品世界は、現実をはるかに超越した新しいヒカリに満ちた世界。目のまえに見える事象を色と光に還元し、デジタル化と抽象化の作業によって、独自の美意識にいろどられたイメージに組み立てなおす。そして見たことのない美しさを生み出す技は、まさに創造と呼ぶにふさわしい。
 現実を記録する手段として近代写真術が生まれて170年。単なる記録からアート表現へ、日本でもやっと写真が絵画や彫刻と同じ芸術のレベルで作られ、鑑賞されるようになったことをほんとうにうれしく思います。そんな新しい時代の試みを探求する山本隆彦さんのアートの冒険を、ぜひお楽しみください。

ギャラリーPAXREX
山本隆彦 写真展 「ヒカリの軌跡」
3月24日(土)~4月15日(日)
11時~19時 水曜定休

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2012年3月19日 (月)

夕陽に映えるニンニクの生命力

Ninnniku
 夕陽を浴びてすっくと立つ凛々しい姿、ニンニク。この升本真理子さんの作品を見て思い出すのは、その昔スペインの田舎町の青空市へ立ち寄った時のお話です。村の広場で農家のおばちゃんたちが朝採りの野菜や卵を並べて売っていた。目についたのは、いろんな種類のニンニク。日本では考えられないほど色も大きさもさまざまで、へえっと思いながらしばらく眺めていると、おばちゃんが「アホ!アホ!」と叫びだす。なんだ、いきなり。「アホちゃいまんねん、パーでんねん」と言ってもニコニコしているだけで伝わらない。あたりまえ。コーディネーターが「スペイン語ではニンニクをアホと言うんです」と教えてくれた。まだ続きがあります。その広場のわきの石垣の上に可憐な美しい白い花が咲いていた。これは何の花?と聞くと、またまた「アホ!」と言われてしまったのです。えっ、ニンニクの花ってこんなに美しいの? それは感動でした。それ以来、私の中ではこの村はスペインのアホ村です。
 升本さんのニンニクは茎がまっすぐ上を目指し、旺盛な生命力を感じさせる根が左右に広がり、安定感が抜群です。これは人類が滅亡した後も何十億年も子孫を反映させ続けるだろうと思わずにはいられない。太陽がもっと高い昼では、こんなにドラマチックには見えないだろう。すこし光が弱くなった時間帯に斜光で撮影したからこそ、永遠の生命力を感じさせることができたのでしょう。見事です。

ギャラリーPAXREX
升本真理子 写真展 
SPROUT 萌芽

3月1日(木)~3月20(火・祝)
11時~19時 水曜定休
 

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2012年3月16日 (金)

キャベツに見る春の夢

Kyabetsu
 遠く海を見下ろす高台で、満開の桜を従えて鎮座ましますのはキャベツなのです。確かに、そう言われれば芯のところから芽が出て、葉が出て・・・あたたかい春の日差しの中、うとうとまどろんでいるキャベツなのだ。のどかなのどかな昼下がり。ドビッシーの調べを聞いているような、心からとろけていきそうな、この心地よさはなんなのだろう? ラファエッロの聖母子像を見たときの感動に匹敵する、と言えば褒めすぎだろうか。
 
 母の胸に抱かれた大きな安心や、いつまでも続く平和な時間、深い愛で結びついた絆、これら何物にも代えがたい幸せは、言葉でいうには簡単だが絵画などビジュアルで表現するのは極めてむずかしい。過去の画家や映像作家たちも幾度となく挑戦してきたけれど、うまく成功した例は少ないと思う。そんな中、この升本さんのキャベツは数少ない成功例の一つでしょう。もしかしたら男性の論理ではこんな概念を表現するのは不可能で、女性の視点からしか生まれないのかもしれません。この素晴らしい作品、現物はPAXREXでご覧ください。

ギャラリーPAXREX
升本真理子 写真展 
SPROUT 萌芽

3月1日(木)~3月20(火・祝)
11時~19時 水曜定休

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2012年3月13日 (火)

宇宙からの訪問者?

Jagaimo
 キミは何者だ! 脳ミソの標本から太い茎がニョッキと生えてきたような異形の姿。宇宙からやってきたかのような不思議なたたずまいで、柔らかい春の陽光を受けて堂々と存在を主張する物体。作家の升本真理子さんから「これはジャガイモ」と聞くまで、頭をひねらせ妄想の世界にしばし遊んでいました。遠くに見える街並みとの関係で、よけい現実感がない。この現実感がない、という表現は最大限の褒め言葉で、ジャガイモを肉じゃがやポテサラの材料としておなじみのスーパーの特売品的あつかいをすると、どんなにアイデアや技術を駆使してもアートにはならないのです。
 この作品が美しく力強いのは、もう一つ理由があります。それは、この透明な空気感です。この空気と光の中では、たんなるジャガイモがまるで古代ギリシャの高潔な哲学者のような風貌に見えてくるから不思議だ。アングルもセンターより下から、少し見上げるぐらい。だからより立派に、より自信にあふれて見えるのでしょう。こんな人格者のジャガイモは、きっと男爵に違いない。

ギャラリーPAXREX
升本真理子 写真展 
SPROUT 萌芽

3月1日(木)~3月20(火・祝)
11時~19時 水曜定休

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2012年3月10日 (土)

奇跡の一本松の子どもたち

Img_3055
 3.11の大津波に呑み込まれた7万本の松原で、たった一本生き延びた奇跡の一本松。陸前高田市の復興のシンボルとして被災された方々をずいぶん励ましてくれたけれど、やはり塩害には勝てなかった。「高田松原を守る会」が保護を事実上断念したというニュースが流れたのは、昨年12月のことでした。とても残念に思われた方も多いことでしょう。
 でも、すこしご安心ください。その子どもたちが岩手県滝沢村の東北種苗場で無事に育っているという。昨年4月に枝の先端部100本を接ぎ木をしたうちの4本から新芽が出ているそうで、うまくいけば3年後には陸前高田に植えられるようです。そしてこの4本には名前がついているのです。長男はノビル、二男はタエル、三男はイノチ、四男はツナグ。名付け親は漫画家のやなせたかしさん。困難を乗り越え、新しい松原に育ってほしいとの願いが込められています。最新のクローン技術で奇跡の一本松の遺伝子が後の世まで受け継がれていく。これも時代だなぁ。
 ちなみに東北育種場では「林木遺伝子110番」というサービスがあるそうです。これは天然記念物や衰退の危機にある貴重な樹木を守るため、クローン再生などで苗木を育て、里帰りさせるもの。ここで新しい命を芽生えさせて故郷へ帰っていった名木が、いままでにもあるそうですよ。

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2012年3月 7日 (水)

PAXREXに幸せな春がきた

Photo
 パッと明るい光に包まれて、PAXREXはいま春まっさかり。升本真理子さんのSPROUT展は、野菜の切れっぱしから芽吹いた新芽が、愛らしく、そしてたくましく、生命の春を主張しています。思いもかけないところから芽を出すキャベツ。一幅の山水画のようなサツマイモ。そうかと思えばサングラスが似合いそうな不適な悪役面のジャガイモ。みんなみんな升本さんが試行錯誤を繰り返しながら育てた、第二のお務めの晴れ舞台です。
 どの子も陽光の下に連れて行ってもらって、アクリル板に座って嬉々としている。Photo_2水を得た魚という言葉がありますが、まさに光を得た野菜。「これが本来あるべき場所なのよ」と言わんばかりに生き生きしています。まだ苦しい経験もなくつらい思いも知らず、未来に対する不安なんてこれっぽっちも感じていない。ゆりかごの中のピュアな喜びが、見る側にも伝わって来て幸せな気分になってきます。
 フォトアクリルの額装も、よくある写真の端で断ち切るのではなく、周囲に35mmの余分が取ってあります。この透明な部分がよけい軽やかな春の印象を与えるのでしょう。それだけではなく、この余白の美、間の美学が生命に対する楽観主義を強調しています。日本も世界もこんな状況だからこそ、生命讃歌を素直に歌い上げるこの作品が広く共感を呼ぶのでしょうね。

ギャラリーPAXREX
升本真理子 写真展 
SPROUT 萌芽

3月1日(木)~3月20(火・祝)
11時~19時 水曜定休
 

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2012年3月 4日 (日)

いわばBONSAIの美学

Ninjin
 ニューヨークでもミラノでも、街角で「BONSAI」という看板を見かけるようになったのは、もう20年以上前のこと。いまやイタリア盆栽協会なるものも存在し、毎年香川県の産地に研修生を派遣している時代です。西洋近代文明の行き詰まりから、日本をはじめ東洋の文化が世界中でブームになっていますが、盆栽や俳句はその代表例。私たちにとってはスシとアニメだけではない日本文化が、広く深く関心を持たれるのはまことにうれしいことです。
 盆栽はさまざまな要素を整理し省略し、世界をぎゅっと凝縮した小宇宙。禅宗の高僧による書画に通じる深みがあります。足し算ではなく引き算の美学。こういう日本人独特の感性や美意識が、資源をたくさん消費して効率や進歩をめざす西洋近代主義に対して、世界の将来を担う哲学として必要とされる時代になってきたということでしょうか。
 ご覧いただいている升本真理子さんの作品は、ニンジン。私にはモダン盆栽に見えます。切れっぱしから芽を出しただけ、と言えばそうなんだけれど、生命の永続性やらCO2の同化による環境の再生可能性やら、現代社会が抱える多くの課題を一身に背負ってけなげに生きているように見える。そこには何百年も経た盆栽の名品に負けない気高い美しさがあります。そして力強い希望のメッセージが伝わってきます。

ギャラリーPAXREX
升本真理子 写真展 
SPROUT 萌芽

3月1日(木)~3月20(火・祝)
11時~19時 水曜定休

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2012年3月 1日 (木)

SPROUTに込められた思い

Tamanegi
使いそびれた玉ネギやジャガイモ、

切れっぱしの人参のヘタに
くり抜いたキャベツの芯などが

ある日を境に思いも寄らない部分から
次々と芽を出し始める。

ゴミとして捨てられる小さな部分の
一体どこにそれはあったのだろう。

目には見えないけれどその切っ先は
きっとどこかに秘められている。

そしてある日、満を持して忽然と姿を現す。

まるでそれが当然のなりゆきだった
と言わんばかりに。

たとえ切れっぱしであっても
乾涸びているように見えても、

内なるエネルギーが満ちたとき

命あるものはすべて自ら芽を出し始める。

己を信じ、力を蓄えよ

たとえ暗闇の中にあっても

前へ進み続けよ

残された時間は限られていようとも

いつかきっと迎えるであろう芽吹きの時のためにー

 

                  升本真理子
ギャラリーPAXREX
升本真理子 写真展 
SPROUT 萌芽

3月1日(木)~3月20(火・祝)
11時~19時 水曜定休

 

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