モルテザさんから日本人へ
ドイツ人アーティストのモルテザ・アリアナさんの作品はユニークだ。ご覧のようにとても洒落ていて現代的だ。写真という手法を使っているが、自分がイメージする世界を表現するための道具としてカメラを使っているにすぎない。だから「露出は?」「構図は?」なんて細かいディテールに頭を悩ませる日本的常識とは一切無縁で、まさに現代アートそのもの。つまり「いい写真とは?」と考えるようでは古い写真の殻から脱皮できない。「いい表現とは?」あるいは「いいアートとは?」といった大きな視点で取り組まないと、写真は単なる記録の手段に終わってしまうおそれがある。モルテザさんの作品は、日本の写真界にそんな警鐘を鳴らしてくれている。
この作品は「甘美と恐怖 zartheiten und schauder」。個人が壊れ、人間関係が壊れ、社会が壊れていく現代日本を憂えて発表した『Decay 壊れてゆく』というシリーズの中の一点です。でも決して暗く悲しい表現ではありません。大好きな日本が立ち直り、もっといい方向に進んでいくように願った、ある種の応援歌だと彼は言う。うっとりする甘美とぞっとする恐怖が薄い紙の裏表に同居するような不安定な意識は、人と人の関係が疎遠になってしまった都市生活者にとっては日常のもの。それをしっかり意識したうえで、積極的に新たな人間関係を築いていくスタート地点にしてほしい。モルテザさんのそんな思いが伝わってきます。その一歩を踏み出す勇気が、いま私たちに問われているのかもしれませんね。
ギャラリーPAXREX
コレクション2012展
1月14日(土)〜2月21日(火)
11時〜19時 水曜定休
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