2011年12月26日 (月)

義援金とボランティア2011

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 まもなく2011年も終わろうとしています。今年も幸いなことに想い出深い展覧会に多数かかわらせていただきました。そして素晴らしいアーティストとの出会いもありました。ギャラリーへ足をお運びいただいた皆さま、作家の方々、ほんとうにありがとうございました。心よりお礼申し上げます。
 今年を振り返るとき、あらゆる意味で大きな影響があったのは3.11です。深い哀しみと心の不安定、これはどなたにも共通の意識だったと思います。ギャラリーとしては、こんな時にのんきに展覧会を開いていていいのだろうか? また個人としては、被災された方々になにかお手伝いできることはないのだろうか? と、いろいろ悩みましたが、ギャラリーとして3.11以降ずーっと売り上げの10%を寄付してきました。展覧会の節目ごとに計5回、日本赤十字社を通じて東日本大震災で被災された方々への義援金です。個人としては災害ボランティアで宮城県の石巻、東松島、岩手県の陸前高田、大槌でガレキの片付けなどに行きました。展覧会の合間をぬいながらなので、短期間ずつの参加です。秋には東北ではないけれど和歌山県の那智勝浦町にも2回。これらがどれほど現地の方々のお役に立てたかはわかりませんが、私自身の心の安定にはすこしだけ貢献しました。なんだ自己満足のためなのか、とお叱りを受けそうですね。
 ギャラリーPAXREX(平和の王様)はその名前の通り、平和であってこそ、平穏であってこそ、アートの魅力をお伝えできると信じています。被災地はまだまだ大変です。人手も要ります。お金も要ります。ですから来年も義援金とボランティアの活動は続けていきます。みんなが少しの時間と少しの汗を持ち寄ると、けっこう大きな力になることを、いろんな人がさまざまな考えで集まると素敵な発想が生まれることを、あらためて学ばせていただきました。こんな経験を今後の活動にも生かしていければいいなと考えております。すべての人、すべての物、すべての日々に感謝です。ありがとう東北、ありがとう2011。

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2011年12月20日 (火)

雪の中から咲く「すいせん」

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 「すいせん」の学名はナルシサス。ギリシャ神話の、水面にうつる自分の姿に恋して死んでしまう美少年・ナルキッソスからきています。彼はナルシストの語源にもなっている。だから花言葉は「うぬぼれ」「自己愛」「エゴイズム」だそうです。ちなみに原産地はスペインやポルトガルなど地中海沿岸地方。日本には中国を通じて入ってきたようです。
 このすいせん、別名は「雪中花」。これは文字通り、春の訪れを予見したように雪の中から真っ先に咲くからでしょう。小林鷹さんの「すいせん」は、まだまだ寒々とした空を背景に健気に清らかに咲いています。そこには寒風に負けない芯の強さも見て取れる。手すき和紙の質感のせいか、花がすごく立体的に見えます。何人かの方が「これ、押し花ですか?」とおっしゃったぐらい。それは和紙の効果だけではなく、ライティング技術や背景のセンスなどすべての面で高い完成度に到達した芸術作品だからでしょう。これら素晴らしい「和花」も今日で見納め。また機会がありましたら、ご覧いただけるかもしれません。今年の展示は終了です。どうもありがとうございました。

ギャラリーPAXREX
小林鷹 作品展「静穏」
2011年12月4日(日)~12月20日(火)
11時~19時 水曜定休
 

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2011年12月17日 (土)

これ、NYのセントラルパーク

New_york
 夜明け前の青い空気のなか、すっくと立つ2本の樹はニューヨークのセントラルパークで撮影されたそうです。うっすら雪が降った翌朝、霧も出ていますね。よ~く見ると右隅に小さく犬(キツネ?)も写っています。小林鷹さんは8年ほどニューヨークでスタジオを構えて雑誌などの仕事をされていたことがあります。だからでしょうか、摩天楼がそびえるマンハッタンの一角とはとても思えない静かな場所をよく御存じですね。
 ニレ科の樹が2本、葉を落とした後なので見事な樹形がよくわかります。縄文杉をはじめ大きな樹は人間の一生よりはるかに長く生きている。そして、たとえ災害にあっても戦争が起こってもその場を避難することはない。より条件のいい場所を求めて移動することもありません。そこで起こった様々な出来事を、ただじっと見つめてきたのでしょう。私たちが樹を見て感動するのは、そこの場所の歴史や記憶を内に取り込みながら生きてきた生命に対する畏怖。いわば場の魂に対する尊敬の念からではないでしょうか。
 1本の樹も凛々しく潔いと思いますが、この小林鷹さんの作品のように2本寄り添うように立っているのもすごくいい。楽しいときは共に喜び、悲しいときは慰めあって、永く生きてきたその時間を思うとき、私たちの心もなぜかほっと軽くなる気がします。

ギャラリーPAXREX
小林鷹 作品展「静穏」
2011年12月4日(日)~12月20日(火)
11時~19時 水曜定休

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2011年12月11日 (日)

なにげない風景が心にしみる

New_orleans
 いまPAXREXで開催中の小林鷹さんの「静穏 Calm」展。有名でも特別でもない場所の、なにげない風景がすごくいいです。思えば今年ほどなんでもない日常がこんなにも愛おしく感じる年はなかったかもしれません。
 昨日と同じ道、去年と同じ海、いつもと変わらぬ街角・・・普段は目にも留めない風景に心を寄り添わせた小林鷹さんの優しいまなざしが、あらためて自分のまわりの身近なモノやヒトや風景を大切にしなきゃと思い起こさせます。意識して見ないと何も見えない。でも無くなってしまうと二度と見ることはできないのだから、今、しっかり見て記憶に留めておかなくてはいけないと思う。毎日をダラダラと過ごすのではなく、自分の意志と美意識を持って主体的に生きること。あれっ、人生の先が短くなると知らないうちに説教臭くなってしまう。クワバラ。クワバラ。
 3.11以来、世の中を見る目もすっかり変わってしまったのではないでしょうか。いままでの思想や価値観、習慣や常識が根底から崩れていくような、フワフワ足が宙に浮いてしまったような妙な喪失感や不安を感じます。こんな時代だからこそ、小林鷹さんの視点がしっかり生きていく勇気と希望を与えてくれるのだと思います。

ギャラリーPAXREX
小林鷹 作品展「静穏」
2011年12月4日(日)~12月20日(火)
11時~19時 水曜定休

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2011年12月 5日 (月)

小林鷹さんの「あつもりそう」

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 来年のNHK大河ドラマで平清盛が取り上げられるとあって、その舞台の一つである我が神戸では、観光業を始めお菓子や土産物などなにかブームにあやかれないかと皆さん知恵を絞っているところでしょう。ここでご紹介する作品は「あつもりそう」。花のカタチが源平時代の武将が身につけた母衣(ほろ)に似ているところから。平敦盛にちなんで名付けられたそうです。
  ♪一の谷の 軍破れ 討たれし平家の 公達あわれ
   暁寒き 須磨の嵐に 聞こえしはこれか 青葉の笛♪
と、小学唱歌(戦前でしょうか?)で歌われた青葉の笛は、須磨寺の宝物館に今も保管されている。敦盛首塚も境内にあります。
 作品の「あつもりそう」は北海道から取り寄せて撮影した、と鷹さんはおっしゃっていました。このシリーズ、東京のスタジオで撮影されている。「えっ、スタジオ?」と驚かれる方が多いと思います。じつは背景は鷹さん自身がキャンバス地に筆で描かれているのです。一点一点すべてその花のイメージに会うように描く。花を置いてみてもし合わなかったら、それはボツ。また一から描き直し。たいへんな労力と美意識が詰まっているのです。
 やさしげな「あつもりそう」に対して、同じラン科の仲間でもっとがっしりした「くまがいそう」というのもあるそうですよ。

ギャラリーPAXREX
小林鷹 作品展「静穏」
2011年12月4日(日)~12月20日(火)
11時~19時 水曜定休

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2011年12月 2日 (金)

小林鷹さんの「静穏」展、まもなく

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 なんということもない日常の暮らしや風景・・・。刺激は少ないかもしれないけれど、オモシロ味に欠けるかもしれないけれど、こんな静かで穏やかな日々を今年ほどありがたく感じた年はありません。あまりにも普通に存在するために、その存在にさえも気づかない。そんな静穏を愛でる視点で作品を撮り続けてきた小林鷹さんの作品展で、激震の一年を締めくくりたいと思います。
 近くの野山に、いつも歩いている道端に、可憐に咲いている『和花』を撮ったシリーズ。そこには園芸種のきらびやかさはない。でも野生の生命力にあふれている。凛とした美しさが魅力です。
 観光名所でもなく特別な歴史もない、つい見逃しそうな場所。そこでふと感じたあたたかさ。小林鷹さんの捉えた心象風景『SERENITY』に宿るやさしいまなざしが心にしみる。
 東北の皆さまにもこの『静穏ーCalm』の思いが伝わればいいなと願いつつ、4日(日)スタートします。

ギャラリーPAXREX
小林鷹 作品展「静穏」
2011年12月4日(日)~12月20日(火)
11時~19時 水曜定休
 

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2011年11月29日 (火)

第5回 義援金ご協力ありがとうございました

 Rinko
  おかげさまで鮒村綸子さんの「気づいて」展も、11月27日(日)、大好評のうちに無事終了いたしました。今回もまた売り上げの10%を日本赤十字社を通じて東北大震災で被災された方々へ寄付させていただきました。すごく魅力的なアート作品を制作してくれた綸子さんと、ご協力いただいた皆さまに心よりお礼申し上げます。
 この展覧会の前には、豪雨被害にあった和歌山県の那智勝浦町にも2度行ってきましたが、東北の津波とは様相が違う種類の水の恐ろしさに足がすくみました。豊かさを与えてくれる自然と、容赦なく奪う自然。どちらも真実の姿で、自然の長い長い時間から見れば、人間なんて仮に寄生させてもらっている小さな存在に過ぎません。おごることなく助け合いながら地球環境に住まわせてもらうしかないのでしょう。
 これから厳しい冬を迎える東北大震災の被災地。現地で不自由をされている皆さまには申し訳ないのですが、ボランティアへ行くのは春まで難しくなるかもしれません。でも寄付についてはまだまだ続けます。いっしょに希望を見出せるよう、できることはこれからもやっていきたいと思います。がんばっぺし!

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2011年11月26日 (土)

「ウキウキする」と蓮根を持つ?

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 鮒村綸子さんの作品「ウキウキする」。彼はどうしてレンコンを持っているのだろう。 たまたま手近にあったから? 穴があるので持ちやすい? いや、どうも違うな。きっと意味を詮索するのは意味がない。あるがままに受け入れて、面白いと感じるか否か、それがより大切なことなのだ。ナンセンスだけど、ウキウキソワソワして踊りだしたい気分が良く出ている。このレンコンがないと、きっとこんなに有頂天の雰囲気は表現できなかったでしょう。無意味の意味。深い。
 結局どこから発想したのかはよくわからないけれど、この作品の場合レンコンが先にあって、それに応じて体や手、髪の毛の水玉パターンが決まってきたのでしょう。これはあくまで推測ですが。レンコンの穴の円が繰り返し広がっていく。パターン化することによって統一感と秩序が生まれ、手のカタチを浮き上がらせて絵としての魅力が高まっている。
 レンコンのほかにも鮒村さんの作品には野菜や果物が効果的に登場する。柿、アスパラガス、しいたけ、みかん、ぶどう…。ユニークな鮒村さんの展覧会は27日(日)までです。ぜひご覧ください。

ギャラリーPAXREX
鮒村綸子 作品展「気づいて」
2011年11月5日(土)~11月27日(日)
11時~19時 水曜定休

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2011年11月23日 (水)

鮒村綸子のバレリーナ 1 と 2

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 もちろん一つひとつの作品でも成り立っていますが、左右二つの作品が合わさるとさらに魅力を発揮する「バレリーナ 1」と「バレリーナ 2」。この作品は、これまでご紹介してきたものと少し趣を異にして、キャラクターがより人間らしくなっています。人間らしく、というのは宇宙のどこかの住人ではなく、たしかにこの地球上に住む我々の隣人という意味で。
 白と黒、青っぽいグレー、茶色っぽいグレー、濃いグレー、淡いグレーなどモノトーンの色えんぴつ10色で描かれたダンサーたち。クラフト紙の地色をそのまま肌の色に使ったシンプルな構成です。そこにコスチュームの微妙なグレーの濃淡が美しく気持ちよいリズムを刻んでいます。モンテカルロバレー団のようなヒゲを生やした怪しげな人や、妖しい魅力を振りまくプリマドンナが、ちょっと太目の鮒村ワールド独特の姿で並ぶ。ボテロよりもっとシンプルに抽象化された人間の形態。ここでもリアルな手がいろんな心の動きを表現している。ここに並んだ人たちのそれぞれの関係や感情を推し量るのも楽しい作業ですよ。

ギャラリーPAXREX
鮒村綸子 作品展「気づいて」
2011年11月5日(土)~11月27日(日)
11時~19時 水曜定休

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2011年11月17日 (木)

誰と誰が? 私とあなた

Photo_3  指切りをして約束したのに。えっ、誰と誰が? 私とあなた。そんな微笑ましいやり取りが眼に浮かぶ二つの作品。黄緑と薄いブルーで描かれた「誰と誰が?」は、ちょっととぼけたでも憎めないキャラクターでしょうか。それに対して「私とあなた」はしっかりもの。紫がかったピンクとグレーの配色が美しい。もちろん一つ一つが独立した作品なのですが、二つ並べるとよけいに面白さが増します。
Photo_4  そう考えて見ていると、今回の「気づいて」展は、それぞれの作品が大きな物語の中の一つ一つのピースのように関連して、いろんな人間関係や社会の様子がうかがわれてさらに面白くなってくる。宇宙のどこかにある惑星で、こんな姿をした人々が私たちとあまり変わらない生活を送っている、とこんな妄想にふけるのも時にはいいのではないでしょうか。どうも近ごろ楽しい現実が少ないようですから。

ギャラリーPAXREX
鮒村綸子 作品展「気づいて」
2011年11月5日(土)~11月27日(日)
11時~19時 水曜定休

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