ピンホールで捉えた地獄
ここは雲仙。もともと「温泉」と書いて「うんぜん」と読んでいたそうだ。水蒸気が噴出し、硫黄のニオイがたちこめる雲仙地獄。昔の人たちはグツグツと沸き立つ高温の湯や白い湯気を見て、また独特の嫌なニオイに包まれて地獄を想像したのでしょう。藤井保さんのこの作品は、ピンホールで撮影されている。だからでしょうか、地獄というより夢幻の理想郷を思わせる幻想的なイメージに仕上がっている。立ち昇り流れる水蒸気が辺りをおおうさまが、ピンホールならではの長い露光時間のうちに、日の出の逆光に浮かび上がる。とても静かで美しい時間。
地獄と極楽、善と悪、自然の恵みと自然災害…。人間は何事も解釈しないと我慢できない生き物です。なんとか自然の営みも分類し理解しようとしてきましたが、自然にはもともと善も悪もない。自然から見れば、人間がそこから何を導き出したか、なんてアンタの勝手でしょ!というところなのだから。そこで、理解を超えた存在は神となる。畏れ、敬い、何とか災いが降りかかるのを免じてもらおうと祈ったものです。それが近代科学の進歩により、理解できないものはないという思い上がった思想に取りつかれ、畏れを忘れ、その代わりに「想定外」という言葉を手に入れた。
藤井さんの「カムイミンタラ」には、今も神が存在しています。ぜひ精緻なオリジナルプリントでご覧ください。
ギャラリーPAXREX
Fujii World 藤井保の世界
2011年9月17日(土)~10月10日(月・祝)
11時~19時 水曜定休
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