おすすめの本『ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間』
大震災に見舞われた地の子供たちは、どんな思いで、どんな夏休みを過ごしたのでしょうか。そんなことを考えながら、ぜひみなさんにご紹介したい本があります。
著者の菅谷昭氏は現・松本市長さん。今年の夏に福島県の子供たちを「信州・ながわ」に招待。多くの制限を余儀なくされている子供たちは大はしゃぎだったようです。
さて管谷氏のこういった放射能汚染にからむ社会活動は、1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所の爆発事故にさかのぼります。その頃甲状腺外科のお医者さまだった氏は、自分の力を役立てたいとベラルーシに飛びます。そこで過ごした子供たちとの5年間を綴ったこの著書は、過去から学ぶという意味でも今再びクローズアップされなければならない・・・ 悪夢のようでも現実ですね。
「まさか、この日本でこんな事故が起きてしまうなんて!」
日々報道される放射性物質・・・ セシウム、プルトニウムなどに混じってヨウ素(ヨード)って出て来るでしょう? 私は何だか疑問でした。「それってワカメなどに含まれているんじゃ? なんで放射性物質なんだろ?」って。この本を読んでみて、よく分かりました。それは放射性ヨードと呼ばれるもので、海藻に含まれている無機ヨードとは違うのだという事。海から遠く離れた海藻を食べる習慣のないベラルーシでは、人々の体、とりわけ子供たちの体が常にヨードを欲していて、大量にその放射性ヨードを体内に取り込んでしまった事。悲しいかな、体はいいヨード、悪いヨードまでをも区別することは出来ないのですね。
子供向けにやさしく書かれた管谷さんの語りかけるような文章は、悲しい現実を伝えつつも、決して暗くもないし、優しさと前向きな気持ちにあふれています。
それはベラルーシの子供たちが厳しい現実の中でも夢を失わず、ひたむきに一生懸命生きているからだと管谷さんは語ります。子供たちからそんな姿勢を学んだのだと。
表紙の写真はタンポポが咲く汚染地域。人が住めないほどに放射能がひどく、建築中の建物がそのまま放置されているそうです。読み終わった後、眺めてみるとメッセージが浮かび上がります。それは1枚の写真が放つ強烈なメッセージです。
ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間
管谷昭著
ポプラ社
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