モルテザさんの「どん底より」
「どん底」と聞けばゴーリキーの戯曲を思い浮かべる方が多いでしょうが、このモルテザ・アリアナさんの作品のタイトル「どん底より」(aus dem Tiefsten)は、ニーチェの著作からだそうです。「Decayー壊れてゆく」というシリーズで人間関係が壊れ、社会が壊れ、国が壊れてゆく現代日本を憂えて創作したうちの一点。ここには自分の立ち位置を見失った現代人が抱える不安や焦燥が取り上げられていますが、決して醜くはない。むしろ限りなくやさしく美しい。
3.11を経験した我々は、「勝ち組・負け組み」や「下流社会」など20世紀の価値観でのモノの見方を超えて、今までになかった新たな価値観で人間関係や地域社会を再構築していかなければならない。それがどんな思想や価値かはわかりませんが、そこにはきっと効率や進歩、成長といった近代主義の尺度では計れない豊かさや幸せが待っているのでしょう。モルテザさんのこの作品、「未知との遭遇」でUFOに向かって歩いていく人々のように感じました。私も一緒に先へ歩いていきたいと思います。
ギャラリーPAXREX
「イメージの領域 Beyond Realism」
2011年8月20日(土)~9月11日(日)
11時~19時 水曜定休
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