ミニマリズム?ホワイトアウト?
「これはもう現代アートですね」と、ご覧になった方が感嘆のタメ息をつきながら言われます。藤井保さんのTSUGAIKE Ⅲ。雪面の白と空の色がほとんど同じトーンになっている。そのなかに、なだらかな稜線のカーブが見えてくる。雲の表情も見えている。
藤井さんがここまでシンプルかつミニマルに雪を捉えるのは、青い空と真っ白な雪で表現される観光ポスターや絵はがきの陳腐さに我慢ならないからだろう。本当の美しさを求めて要らないな要素をそぎ落としていって、最後に残る「積雪」という自然現象あるいは日本の雪のエッセンスが1枚に凝縮されている。なんともいえない微妙な淡いトーン。一見何もないように見えて、じつは凹凸のディテールや雪に埋もれた地面の気配まで極めて緻密に描写されている。
「藤井さんがシャッターを切られる状況は、我々にとっていちばん危険な時です」と登山家が言うような悪天候の下で、この作品も撮影されたに違いない。ホワイトアウト。でも不思議なことにまったく寒さや恐怖を感じない。むしろ大いなる自然の懐に抱かれた、安らかな気分すら感じられる。自然と対峙する考えを捨てると、人間の都合ではない自然そのものが持つ、いわば善悪を超えた清らかな美しさに到達するのかもしれませんね。
PAXREX5周年記念
パクコレ vol. 2 「ながめ」
4月16日(土)~5月15日(日)
11時~19時 水曜定休
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