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2010年12月27日 (月)

ソロとパーティーと“凍”

Photo  あれは2008年の春の事、今年平城遷都1300年を迎える記念イベントとして、奈良で開かれた沢木耕太郎さんの講演会に参加しました。
テーマは「ソロとパーティー」。その内容は、ご自身の著書「凍」に密接に結びつくものでした。
 夫婦揃って世界屈指のクライマーである山野井泰史氏と、妻の妙子さん。この二人がヒマラヤ山脈に位置する、高さ7952mのギャチュンカン登頂を目指します。
 かつて登山と言えば大量の人員と物資を使ってキャンプを徐々に前進させ、パーティーを組み、その中の誰かを登頂させるというやり方が主流でした。
 やがて山野井氏のようにソロ、あるいは少人数で短期間のうちに登り切る、アルパイン・スタイルがヨーロッパで生まれ、今はヒマラヤでも広がっているとか。
 ソロで行くか、パーティーで行くか・・・。もちろんどちらにも問題点はあり、利点はある。それは登山と言う命を掛けたスポーツだけに限らず、我々の普段の生活にも顔を覗かせるもの。時に選択を迫られるもの。
 「パーティーもいい。しかし人間はソロとしてもやっていけるほうが、より深い人生を送れるのではないか」。それが沢木さんの提案でした。例えばどこかに出掛けて道に迷った時、1人っきりなら大変だけれど、辿り着いた時の、その状況を切り抜けた時の喜びは深い・・・ よね?
 ところで「凍」においてのクライムは、山野井氏のソロではなく、妙子さんとのコンビです。
ロープで繋がれたパートナーが滑落。「もう死んでいるだろうか。それとも・・・」 究極の状況の中で、冷静に判断を下していくクライマーの葛藤と判断力の描写は息を呑むばかり。
 この登頂による凍傷で、山野井氏は右足の指を全部、左右の手の薬指と小指を付け根から切断。妙子さんに至っては、以前の凍傷に加えて、手の指は10本全て付け根から失います。
 それでもこの二人「無理だろうか」「無理だと思う」と繰り返しながら、再びギャチュンカンに向かうのです! それは頂上に立つことを目的にしたものではなく、かつてそこに残してきた荷物をゴミとして回収するため・・・。 
 この二人の出会いって、やっぱり神様の粋な計らいだろうか?
 沢木さんの名調子に乗っかって、半日もあれば読破しちゃいます。止まらなくなります。ぜひ!

「凍」
沢木耕太郎著
新潮文庫
 

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