心に残る風景
昔何処かで見たような風景。いえ、今日だって、通勤途中の公園にそんな風景は在るかもしれない。芝生の上に椅子があって・・・ ただそれだけだもの。
小林鷹さんがシャッターに収めたその1枚、場所はパリ。向かい合った2脚の椅子は中央には無くて、ぎりぎりファインダーの中。横に立つ樹も根っこの部分だけがちらっと。何でだろ?何でこんな構図なんだろ?
そんな疑問が湧く時はもう、この写真に魅せられているのだと思う。誰も座っていない椅子にストーリーを感じる。そこに漂っている空気も、光も感じる。この場所で、どんな音楽を聞こうか。誰と話そうか。ちょっと気の利いた、ちょっと気だるく、おしゃれな風景の中に自分を置いてみたい。 そんな何気ない風景とは対照的なのが赤松章さんの作品。撮影場所のメテオラ(ギリシャ)は「宙に浮くところ」を意味するそうです。
その名の通り、浸食された礫岩からなる巨岩がにょきにょきとそびえ、頂上に修道院がしがみついている風景。いったい何故こんな場所に?どうやって辿り着くの?それは余りにも非日常的な風景への憧れ。俗世間と離れ、静かな祈りの場所を求めて不便な奇岩のてっぺんに住むようになった修道僧たち。神に近く、人からは遠くと彼らが選んだその地。いつか訪れてみたいと思いながら、一方でたぶん自分はそこに行く事がないだろうと言う思いが、なおいっそうこの写真の持つ意味を深めてくれる気がします。 そしてマルコ・マイアンティが撮ったヴェネツィアカーニバルの風景。一年のうちのある時期、まるでタイムスリップしたかのように町全体が様相を変え、その中にすっぽりと包まれる快感。その写真を見るものにまでゾクゾクは伝わります。ただでさえ浮世離れした町・ヴェネツィアの、それはこの町だからこそ起こり得る、成し得る、人が創り出す特異な非日常的な風景。
異なる場所の異なる風景には「ヨーロッパの光」というキーワードがあります。3人のフォトグラファーが切り取ったこの地にしか無い光と影を見ながら、つかの間旅をしてみませんか?
ギャラリーPAXREX
小林鷹、マルコ・マイアンティ、赤松章
写真展「ヨーロッパの光」
6月12日(土)~7月13日(火)
11時~19時 水曜定休
| 固定リンク
「アート雑記」カテゴリの記事
- 世界の街で草間彌生(2023.05.17)
- 海の未来はダイジョーブ?(2022.07.29)
- 絶景! 五色塚古墳(2022.06.11)
- おもしろキュビズム空間(2022.04.26)
- なぎさ公園アート散歩(2022.04.14)
「展覧会情報[2010]」カテゴリの記事
- 六甲山で「マッチラベル展」(2010.12.21)
- ポップな四葉のクローバー(2010.12.24)
- パワースポット下鴨神社の森にて(2010.12.19)
- 吾輩はネコにゃのら!(2010.12.13)
- 大阪で、PECHU「冬の金魚」展(2010.12.07)
コメント