本田かな、桜パワーの不思議
今年の桜もそろそろおしまい。パッと咲いてパッと散る、この潔さも桜の魅力のひとつですね。期待感ふくらむつぼみも、満開の爛熟も、春の嵐に舞う桜吹雪も、どれも絵になる。どれも詩になる。私たちの意識の深~いところで感応する不思議な力が宿っているからでしょう、芸術でも生活習慣でも、桜ヌキでは日本文化は成り立たない。
桜が日本を代表する花になるのは平安時代からですが、1千年の間に遺伝子に刷り込まれたイメージは、とても強固なもの。でもそのイメージは強大すぎて、普段は意識されない。まるで水や空気のように私たちを包んでいるのに。本田かなさんは、それをうまく作品に取り込んでいます。 どんなイメージを持ってきても不思議とマッチする、桜が持つ大きな包容力。意味を深読みしたくなる、美のフィルターやリトマス試験紙のような働き。このような桜の特性をを使って、エッシャーのように、マグリットのように、ダリのように、私たちの目と脳に挑戦してくる。
異なるものの組み合わせから生まれるギャップに刺激を受け、新たに融合されたイメージを楽しむのが本田かな作品の鑑賞法。たとえば「タイルの流し台と桜」。大阪で一番古い鉄筋アパートである軍艦アパートが取り壊しになる、と聞いて駆けつけたときに撮影した流し台だそうです。 暖かい日の光を浴び、満開の桜に囲まれて幸せいっぱい春ウララ、といったおもむきですが実は最期の時。うれしいのかなあ、哀しいのかなぁ。
たとえば「ミノカサゴと桜」。満開の桜の前を悠然と泳ぐミノカサゴ!ってありえないシュールな状況なのに、あっても不思議はないと思ってしまう自然な感じ。考えてみれば、不思議と感じないことが不思議ですよねえ。もう本田さんの術中にはまってしまっているのかなぁ。
たとえば「建築中の家と桜」。いまどき木で足場を組んでいる建築現場って珍しいでしょ、と彼女は言っていました。 確かに今はパイプで組んでいます。でもそんなことより見た瞬間、満開の桜に囲まれたツリーハウスがあればサイコー!と素直に思ってしまう。桃源郷ならぬ「桜源郷」。
どれも編むことによって生まれる独特の質感が、作品におもしろい魔法をかけている。現代アートは難しいとおっしゃる方も、近付いて見たり離れて見たり、斜めから見たりと、今回の本田かな作品は皆さん十分楽しんでいただいているようです。ウェブの画像や印刷物では再現できないのが残念ですが・・・。展覧会は18日(日)までですので、ぜひPAXREXで現物をご覧ください。
ギャラリーPAXREX
本田かな写真展『狼と桜』
4月18日(日)まで
11時~19時 水曜定休
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