アバターも真っ青!超絶立体感
本田かな作品の素晴らしさを、うまく言葉で伝える文章力がないのがもどかしい。でもそれはいいアートの条件かもしれません。作家の意図がすぐにわかるような単純な作品は面白くないでしょ、すぐに飽きてしまう。
写真を編む、という独自の技法。様々な見方ができ、見る人それぞれが思い思いに楽しめ、見るたびに新しい発見があるユニークな表現。夢と現のはざまに浮かび上がる不思議なイメージ。「立体感」というキーワードで見てみましょう。
幅80cm×高さ160cmの作品を2つ展示しています。どちらも12点ぐらいの写真を使って構成しているそうです。これを見ていると、自分の体が宙に浮いて揺らめいているような妙な感覚に包まれる。神になって下界を見下ろしている、あるいは天上の街へ吸い上げられてゆく、そんな感じ。えっ、アタマどうかしてるんじゃないの、桜に囲まれているせいで。いやあ、ごもっとも。いずれのイメージも普通じゃないですよね。でも私は寝ぼけているわけでもないし、神秘主義者でもない。3Dのアバターも真っ青、ホントにものすごい「立体感」で迫ってくるのです。
10mm幅に切った写真をタテ・ヨコに編んでいくのだから、当然印画紙1枚ぶんの凹凸はある。でも、そんなものじゃない。「白、黒、グレーの絵の具を思いっきり厚く塗り重ねたみたい」とおっしゃった方もいます。「何十メートル先まで奥行きがある」と言う方も。で、なぜそんな見え方をするのか、ちょっと考えて見ました。切り抜いて合成しただけなら、絶対にこんな見え方はしないから。
(理由その1) 使われている写真は撮影したアングルもさまざま、上下を逆に使った写真もある。 (理由その2) 短冊状に切られた印画紙のエッジが、規則的に白く並んで見える。 (理由その3) すべての要素はモノクロームの四角いトーンの明暗でできている。 (理由その4) 細く切って編んでいくため微妙なズレやユガミがあらわれる。 (理由その5) 画面のあらゆるところを埋め尽くす「さくら」には人を惑わす魔力がある。
いくら考えてみても、よくわからない。本田さん自身の言葉によると「編んでゆくごとに現れる細かな四角いトーンは、分子が結晶するように、私が創造する世界を構成してゆく」そうだ。いろいろな要素が複雑にからみ合って化学反応を起こし、まるで錬金術のような効果を産み出しているのでしょうね。
文章で読んだり画像で見たりしたものと現物との印象がこんなに違う作品も珍しい。もちろん良い方にね。これはもうPAXREXで見ていただくほかはないと思います。
ギャラリーPAXREX
本田かな写真展 「狼と桜」
3月13日(土)~4月18日(日)
11:00~19:00 水曜定休
| 固定リンク
「展覧会情報[2010]」カテゴリの記事
- 六甲山で「マッチラベル展」(2010.12.21)
- ポップな四葉のクローバー(2010.12.24)
- パワースポット下鴨神社の森にて(2010.12.19)
- 吾輩はネコにゃのら!(2010.12.13)
- 大阪で、PECHU「冬の金魚」展(2010.12.07)
コメント