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2009年5月22日 (金)

クレーの食卓

「忘れっぽい天使」(『Klee's Kitchen』より)  クレーって誰? 20世紀を代表する画家、パウル・クレーのことです。日本人に深く愛されている彼の作品。その魅力に一風変わったアプローチをと、日本パウル・クレー協会の方々が編集、執筆された『クレーの食卓』。そのアイデアに見事にハマっちゃいました。
 表紙にはクレーの作品である「リンゴ一等賞」裏表紙は美味しそうなフレッシュ・シャンピニオンのサラダ(1934) 一方裏表紙には美味しそうなフレッシュ・シャンピニオンのサラダの写真。そして「Klee's Kitchen」とさり気なく題されています。
 うん? どっちが表なんだか、裏なんだか?・・・裏から辿っていくと、これは紛れもなく料理のレシピ本です。クレーという画家、食べる事が大好きで、ピアノ教師をして生計を立てていた妻のかわりに“主夫”をしてた時期があるそう。そんな彼が残した膨大な料理にまつわるメモや日記、あるいは手紙をもとに再現された料理は、ふわりと暖かく、眺めているだけで心が和みます。きっとクレーやその家族にとっても、戦火の時代のつらさを、しばし忘れさせてくれるものだったに違いありません。
 もちろん金銭的にも恵まれた境遇ではなかったので、料理とアートの本です つつましやかな料理が食卓に並べられたようですが、その小さなキッチンが、同時に彼にとってはアトリエだった! そこが面白いですよね。
 一人息子の面倒を見なければならず、外出もままならない。この時期、彼の作品のモチーフは、台所から眺められるものだけに限られていたそう。でも絵画の制作と調理は似たところがあるといいます。確かに準備の段階を踏んで、創作するものが形を為してゆく。料理と絵画は全く異質のものではないのだという発想。その両方を愛したクレーと言う偉大な画家の足跡を辿る事によって“そうなんだ!”と納得出来ます。
 クレーが生きた時代は、一握りの権力者によって芸術が排除され、彼もまた「退廃芸術家」という烙印を押されてしまいました。それでも死を迎えるまで、ひたすら意欲的に創作に取り組み、数多くの作品を残したクレー。今の時代に彼が生きていたらどうでしょうね。写真、絵画、イラスト・・・さまざまな分野の垣根が取り払われ、またアートを視覚だけでなく、表紙は「リンゴ一等賞」(『クレーの食卓』より)身体性からも考えていこうとする大きな流れ。少なくとも決して、アートを迫害するような時代に逆戻りしてはいけないんだと、彼の名作「忘れっぽい天使」を眺めながら思います。

『クレーの食卓』
林綾野 新藤信(日本パウル・クレー協会)編・著
講談社

兵庫県立美術館では
特別展「20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代」を
5月31日まで開催中です。

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