パリのおばあさんの物語
買い物をしているおばあさんの後ろ姿・・・バルセロナのグエル公園を訪れた時、露店を出していた青年から買ったお気に入りの絵。義母に似てるなあ、何処の国でも愛らしいおばあさんって居るんだなと。
で、 パリのおばあさんはどんなだろ? 年を取ってもやっぱり、固いバケットを食べるのかしらん? 日本よりずっと寒いだろうけど眠る時はどうするの?
フランスで子供から大人まで読みつがれているという『パリのおばあさんの物語』は、想像していたよりずっと小さな絵本でした。市場で買い物をしているおばあさん、いったいどこに居るの?と、まるで探しものの絵本のように、目を凝らしました。だってけいママも、それほど若くない。いえ、若いという言葉はもう、どこかに飛んでいってしまいましたとも。財布の中のコインがよく見えない。玄関の鍵穴で一苦労。眼鏡やハサミ、一日中探しもの・・・あっは!一緒なんだ、パリのおばあさんも。
違いと言えば、そこはパリのアパルトマン。ちょっと鼻にかかったようなフランス語読みをすると、それはもうちょっとオシャレで、エスプリ? ハート模様のような壁紙に、亡くなったおじいさんの写真や、たくさんの額が飾られている。おばあさんは古いソファーに座り、チェックの膝掛けを当てて、遠い思い出に浸る。あっは!やっぱり同じなんだ。うちのばあちゃんもこたつに体を入れて、頬杖を付いて昔の話をする。そんな様子をじいちゃんの遺影が見つめてる。
パリのおばあさんはそして、とってもかわいくて前向き!シワも白髪も「変身するのが大好きだったんだもの」と受け入れる。大好物の玉ねぎ炒めを、胃が受けつけなくなっても「これでもう、玉ねぎを切って眼を泣きはらすこともなくなったわ」と言って笑う。でも老いをすんなりと受けとめるおばあさんの歩みには、とてもつらい出来事があったのです。
そんなおばあさんの過去を追って行くページのところどころに、ハッとするような読者への問いかけが。あなたはこんな体験をした事がありますか? あなたはどう思うかしら・・・? それは翻訳者である大女優・岸恵子さんのあとがき「この広い世界には、いろいろな人が生き、日本にいては考えられないような暮らし方をしている」ことを知ってほしいという、メッセージに繋がっていきます。
パリのおばあさんと、二人の年老いた私の母たち。その姿を重ねながら、私自身の老いを想い、またこの国に生まれた安堵感さえも感じさせてくれた一冊。これから先も何度も手に取って、さわやかな言葉を貰い、見事な老い方を見習わなければと思います。『パリのおばあさんの物語』
スージー・モルゲンステルヌ著
セルジュ・ブロック絵、岸恵子訳
千倉書房
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コメント
たしかに、この買い物のおばあさんは

うちのお婆ちゃんに似てますね
ずいぶん前からある絵なのに気づかなかった
投稿: たく | 2009年1月 6日 (火) 21時21分
パソコンのすぐ横に置いてあるのですが、

気付かないものですよね、案外
この絵を売っていた青年は
その後どんな絵を描いているのか、
それも気になります
投稿: けいママ→たくさんへ | 2009年1月 7日 (水) 16時55分