2008年12月27日 (土)

'08 K-ママ・グランプリ(前編)

「TANTO TEMPO」 あらまっ! 今年もK-ママ・グランプリの発表やわ。ワクワクドキドキ・・・。とは誰も言ってくれないけれど、1人静かに盛り上がっております。
 まずはご当地栄町のK-ママ・グランプリは、5月にオープンしたフォトカフェ&ギャラリー「TANTO TEMPO」に! 皆さんはもうお出かけになりましたか? ただ今“写真を部屋に飾ろう”をテーマに、14人の写真家の作品がずらり勢ぞろいですよ。
 写真がアートとしてなかなか認識されない、この国の現実に立ち向かうべく、次から次へとアイデアを仕掛けるオーナーさん。パリフォトにも足を伸ばし、一方で若手作家の育成にも力を注ぐ行動派。はあ、のんびり、おっとり、地下空間でお客様さまを待つPAXREX店主とは、ずいぶんタイプが違います。でもコンセプトは同じ。 14人の写真家の作品がずらり勢ぞろいです 心強いお仲間。「TANTO TEMPO」の出現で、栄町はアート・ストリートへのストーリーを刻み始めています。カフェスペースには、けいママも度々出没。さんさんと日が射す心地よい窓辺から、乙仲通りを眺め、ゆっくりお茶する午後のひとときは極上です。
 一方のPAXREX、今年の展覧会はその佇まいにふさわしく、静かなものが多かったです。新春のPAXREX STYLE展に続き、小林鷹さんの「SERENITY」 森雅美さんの「翳shade」 藤井保さんの「藤井保の世界Ⅲ」そしてちょっと社会派モルテザ・アリアナさんの「Decayー壊れてゆく」。さらに初めての写真以外のアート、 「TANTO TEMPO」カフェスペース PECHU作品展「宇宙と金魚と天使」。ふ~む、やっぱりグランプリはお客さまに決めていただくしかないですよね。
 でも大ヒットとなったPECHU作品シールをグランプリにしたいと思います! ポストカードではなく、シールです、シール。透明フィルムに、高性能のプリンターで出力したもの。展覧会期間中は、PAXREXのガラスのドアーに貼付けていました。これをご覧になったお客さまは「欲しい、欲しい!」の大合唱。こちらはPAXREXのPECHU作品展(ドアにはシールが) 好きな作品シールを選べるとあって、あれこれ楽しく迷って下さいました。実はこのシール、家内工業でひっそりと制作したのですが、おかげさまで内職に忙しかったのなんの!窓に貼れば、鮮やかなPECHU作品が浮かび上がる。冷蔵庫や鏡、ファイルやノートに貼れば、気軽にPECHU作品と触れ合える。そう言えばPECHUさん、作品創りの時には、色々な願いや魔除けを意識するそうですよ。「お部屋に飾って貰えば、きっと私のそんな想いが伝わるはず」。と、控えめな彼女が実に凛々しく断言しました どうです?あなたも栄町に「新年に向けて、何か部屋に飾るもん買いに行こか?」。って気になってくれましか?ではでは頑張って何とか年内に、食べ物編K-ママ・グランプリをお届けしますね。 PECHU作品シール、大好評でした

TANTOTEMPO
pure写真展vol.1
12月30日(日)まで

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2008年12月19日 (金)

「PECHU」展 23日までです。

PECHU作品展、23日までです  ひたすら絵を描いて暮らしたい・・・。それがアーティストPECHUさんの切なる願いです。絵を描いてご飯を食べていける・・・。それは溢れる才能と、強運を呼び寄せる力、更には自分らしさを失うことなく、日々絶え間なく努力を積み重ねていける、ほんの一握りの人たちだけに可能なことです。
 PECHUさんならば! いや、こんな凄い絵を描く子、何とかせなあかん! ギャラリー店主・ひろパパはそう考えました。彼女の才能を世に問いたいと、彼女の作品を世に出す事が使命だと。これはPECHU作品展のポスター 初めてその作品を目にしてから、実に2年以上。
 今回多くの方たちのご協力のもと、PECHUさん初の個展を、この名も無い、何の実績も無いギャラリーで開催出来たことは幸せでした。そしてPECHUワールドへ足を踏み入れてくださった方々の声。「こんなん、初めて観ました。毎日眺めていたい」。「アートを買うなんて、自分には縁が無いと思っていました。でもワクワクしますね」。と、そんな感想をお聞かせいただいて、これぞギャラリー店主、至福の時。
 そして彼女の才能にひれ伏すけいママは、「まだやってはるわ、けいママさん」。とたとえ飽きられようと、PECHUポエムを書き続けております。同時にもっともっと多くの方々に、彼女の作品を観ていただきたいと毎夜天使さまに、お祈りを捧げる日々。あちらこちらのアートフェアで活動を続けているPECHUさん
 一方PECHUさんは、あちらこちらのアートフェアで活動を続けています。彼女の作品に目を止めたら最後、多くの人たちが引き込まれてゆく。「見てください、私の作品」。そんな言葉を発することもなく、彼女はその場でも絵を描いています。そう、その指先にこそメッセージがあります。強烈なアートがあなたの目の前で生まれていきます。
 PECHU展「宇宙と金魚と天使」終了後の新しい年も、彼女が心置きなく創作活動に励む事が出来るよう、天才を見出してしまったひろパパの挑戦は続きます。
 でも味方は多い方がいいなあ〜・・・願わくはあなたと共に。あなたに出会って欲しい、見つけて欲しいアートがあります。

ギャラリーPAXREX
PECHU作品展「宇宙と金魚と天使
11月20日(木)〜12月23日(火・祝)
11時〜19時(水曜定休)

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2008年11月19日 (水)

さあ、PECHU作品展です!

PAXREX、初めての写真以外の個展です  宇宙という雄大な空間。あるいは両手で覆ってしまえるような小さな金魚鉢。そのどちらにもPECHUさんの世界があります。
 PAXREXが出会ったとてつもない才能を、やっとご紹介する準備が出来ました。新星アーティストPECHUさんの、今回は本格的デビューです。そしてPAXREXにとっては、初めての写真以外の個展です。
一本のボールペンから生み出されるPECHUさんのアート  思えば彼女の作品を初めて目にしたのは、もう2年以上も前。見た瞬間、何て美しいんだろとため息が出ました。一度見たらもう、頭から離れない! そんな作品に出会う機会は、たとえギャラリー店主として、数々の作品に触れていても、そんなにある事ではないんです。さらにその絵が、0,3ミリの太さの、一本のボールペンから生み出される事にも驚きました。あの頃のPECHUさんは、逆算するとまだ24歳だった!「20人の天使展」作品
 そして昨年のPAXREX「20人の天使展」に、彼女も20人のアーティストの一人として、PECHU天使を出品してくれました。繊細なその作品を一目見てPECHUファンになり、彼女の参加するアートフェアに出掛けていくようになった男性を、少なくとも二人知っています、はい。
 半年程前PAXREXに、久しぶりに顔を見せたPECHUさん、おもむろにかばんの中から『金魚たち』の作品を取り出しました。「しばらく家にこもって、金魚ばかり描いていたんです」。
「金魚」の作品を加えていよいよ個展  目に飛び込んで来た鮮やかな金魚、かわいい金魚、メランコリーな金魚、・・・以前からPAXREXに紹介してくれていた作品に、この金魚シリーズを加えると、やっと点数が揃った!「フーム、もう展覧会をやるっきゃない!」と、ひろパパは決心を固めました。
 PECHUさん、あの頃と少しも変わらない澄んだ眼差し。ギャラリーに来ても、数々の作品を、どれほど時間をかけて観ることか。お待ちしてます! やがて彼女が感じたものが、ゆっくりと溶け込むように消化され、彼女の手に握られたボールペンからミラクルが、ファンタジーが生まれます。
 どうかあなたもPECHUワールドを、ご覧になって下さい。一目彼女の作品に出会えば、それはあなたにとっても、ステキな出来事の始まりだと、PAXREXは信じています。
 大事に、大事に才能あるアーティストを育てて行く、そんなワクワクをあなたと分かち合える事を願って『宇宙と金魚と天使』いよいよ開幕。PAXREXが夢ある空間となりますように。

ギャラリーPAXREX
PECHU作品展「宇宙と金魚と天使
11月20日(木)〜12月23日(火・祝)
11時〜19時(水曜定休)

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2008年11月 4日 (火)

アートの新星とPAXREX

サントリーミュージアム[天保山]で開かれた『アートストリーム2008』  あるところに、毎日ひたすら絵を描いている女の子がいました。彼女がそのために使う道具は、ボールペンだけです。その名を「PECHU」。今日はサントリーミュージアム[天保山]で開かれた新進アーティスト104組の展覧会&マーケット『アートストリーム2008』でブースを開いています。お客さんを待つ間にも、描いてる、描いてる、ずっと描いてる。
 その手元を見て下さいな。下書きなんてありません。頭の中に完成形がすでにある?と、言うわけではないそうです。ブースを開いていたPECHUさん でも面白いほどに手が動き、連続模様が、あるいはモノの形が現れます。
 と、そこに一人のおばさんがやって来てPECHUさんに声をかけました。「調子はどう?」「あっ、けいママさん!」 はい、この日は彼女の様子を見がてら、アートフェアを見学。
「私、接客が何より苦手で・・・」。と言うPECHUさん。確かに店番をしていても、すぐ絵を描き始めちゃいます。全くお客さんに気付かない時も。11月20日からPAXREXで個展を開催するアーティストです
 で、けいママ、せっせとPAXREXの案内状を手渡します。「11月20日から、うちのギャラリーで彼女の初めての個展をやります。是非来てくださ〜い!」。お客さんの中には、このどでかいハガキがTAKE・FREEだとは思わず「ええっ! ただで貰っていいんですか? きれいですね、これ。飾ります!」って方も。嬉しいですねえ。
 さて、どんどん人が増えて来た。ご近所さんはどんな風? 他にも、イラストや写真、アクセサリーなど、さまざまな表現法を用いたブースが 細かく区切られたブースには、イラストや写真、アクセサリーなど、さまざまな表現法を用いた作品がひしめき合います。彼らはキラキラした目でアートを語り、自分の作品に目を止めてくれたことにサンクスを言う。そのさわやかさ。また晴れやかな秋空の下で、アート制作に励む若者たちののびやかな姿。
 一方訪れる人々は宝物探しのように、ウキウキして各ブースを廻り、時に選び抜く。この中から、やがて世界に羽ばたいていくアーティストが生まれるかもしれない 手にした、たった一枚のポストカードが、この先自分の心をポッと慰めてくれることだってある。この中から、やがて世界に羽ばたいていくアーティストが生まれるかもしれない。そんな期待やドキドキを、実際の形に繋げていける、これがギャラリーの醍醐味でしょうか?
 アーティストとその作品を求める人々。その橋渡しをするギャラリー。PAXREXはこの度縁あって、PECHUさんの展覧会をします。いずれ改めて、彼女の紹介を。
 顔の無い人々の、不思議な写真「Decay」展の後は、オープン以来初めての、写真ではない展覧会です。アートの新星にかけるPAXREXの想い。まずはご案内をあなたに。

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2008年11月 1日 (土)

ニーチェと、日本の美意識と

 ギャラリー店主ひろパパが語る『Decay』。今回は作品タイトルから迫るその魅力です。

 11月9日(日)まで開催中の『Decay -壊れてゆく- 』展。作家のモルテザ・アリアナさんは、すごいインテリです。なにしろ作品名はすべて哲学者ニーチェの著作からとった、と言うのですから。「詩的でとても美しいドイツ語です」とおっしゃるが、日本語に訳した私は「この人を見よ」「ツァラトゥストラはかく語りき」などの著作を出した、実存主義の先駆けで偉大な思想家、というぐらいしかニーチェについては知らない。ですから皆さまにはつたない日本語訳しかお読みいただけなくて、申し訳ございません。 「神はどこへ行ったのか(goetzen neue flucht)」
 たとえば「神はどこへ行ったのか(goetzen neue flucht)」。そのまま訳せば神の新逃避、といった感じでしょうか。これは、神はどこにでも存在するが、人間がそれに気付かなくなったというような意味合いだそうです。お地蔵さん(?)の横をさっさと通り過ぎる女性。ちょっとユーモラスでしょ。
 「大いなる昼休み(der grosse mittag)」。「大いなる昼休み(der grosse mittag)」 なんか緊張の解けたユルイ雰囲気が、観る者をホッとさせてくれます。ところで、どの作品も余白の取りかたが大胆だと思われませんか? モルテザさんは実は日本の伝統的な美意識をずいぶん研究されたそうです。ワビサビの心や、水墨画などで極限まで要素を省略して本質に迫る美学。ニーチェの哲学と共に、日本人が持つこのような美意識から、この独自の表現スタイルが生まれたという。そう言われれば、そんな風に見えてきますね。だから彼はスタイルの確立に大きな影響を与えてくれた、日本と日本人にとても感謝しています。
「私は薔薇を見なかった(Ich sah keine Rose)」  こんなのもあります。「私は薔薇を見なかった(Ich sah keine Rose)」。薔薇は単に花のバラではなくて、大切なもの、いとおしいもののシンボルなのでしょうけれど。みんなうつむいて、すこし意気消沈したような様子が切なくもカワイイ。「ゆるやかな退廃(entartung sanft)」
 すこし辛口の「ゆるやかな退廃(entartung sanft)」。重苦しくなりがちなテーマですが、作品はポップで軽快。重いものを重く表現してしまうと、美しくも面白くもない。見るものに苦痛を与えるだけですからね。そんなツボも心得た素晴らしい作品を、ぜひご覧ください。

Decay -壊れてゆく- 』展
  ~11月9日(日)まで
11時~19時(水曜定休)

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2008年10月26日 (日)

顔のない人々

「甘美と恐怖」  顔がないって、どういうことなの? 安部公房に「他人の顔」という名作があったけれど。と、今日はギャラリー店主のひろパパが『Decay』を語ります。

 いまPAXREXで開催中の『Decay -壊れてゆく- 』展の作品では、現代に生きるさまざまな人物像が捉えられています。しかし、それらの人物には顔がない。まるで魂がそのまま服を着て街に現れたように見えます。
 ファッショナブルなセレブっぽいカップル「甘美と恐怖」や、カラフルなコスチュームを身にまとった女性たち「笑いの中に氷を見た」。「笑いの中に氷を見た」 みんなゆらゆらと漂い、あるいは行き先を決めかねているようにボンヤリ佇む。それは自分自身に、また人間関係に自信が持てなくなって漠然とした不安や不満を抱えながら今を生きている、私たち日本人のリアルな姿なのでしょうか。それも特定の誰かではなく、普通に生きる我々みんなが心のどこかで思い当たるフシのある・・・。
 神戸に7年間在住し、愛する日本の社会を見続けてきたドイツ人写真家モルテザ・アリアナさんが現代を表現する、まるで真昼の夢のような世界。サラリーマンもいます「最後の人類」。もしかしたら仕事で悩んでいるのかもしれない。「最後の人類」 いくら自分で努力しても、何が起こるかわからない世の中ですからね。若者もいます。楽しく一日が過ぎればいいと思いながらも、ふと将来を気にする瞬間があるかもしれない。
 人間は顔が違うように個性も違う。生き方も考え方も違う、それぞれ唯一無比の存在です。だから人間って素晴らしい。でもその存在そのものが揺らいできている、とモルテザさんは感じたのでしょうか。だから顔が見えない。私たちに「しっかり自分の顔=意思を持ちなさい」と激励してくれているようですね。
 
ギャラリーPAXREX
Morteza Ariana   「Decay-壊れてゆく」 
10月4日(土)〜11月9日(日)  11時〜19時(水曜定休)

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2008年10月14日 (火)

モルテザさんを囲んでDecay展パーティ

開催中の「Decayー壊れてゆくー」展のパーティ  神戸栄町にて秋の午後、外国人の方々が続々とギャラリーPAXREXへ。現在開催中の「Decayー壊れてゆくー」展は、ドイツ人写真家モルテザさんにとって初めての個展です。それを記念してのパーティには、ドイツ人の方々を始め国際色豊かな面々が集いました。
 まずはけいママが前日に準備したパーティ料理を見て下さいな。けいママが前日に準備した料理 チコリの葉にツナディップが載っていますが、モルテザさんによるとドイツではとても人気のある野菜だそうですよ。「日本では凄く値段が高いねえ〜」と残念がっていました。大好評だった「小玉ねぎのマリネ」はひろパパの得意料理! 以前イタリア人フォトグラファー・マルコも絶賛してくれましたっけ。作り方ですか?それはまた次回に・・・。今日はパーティ、パーティ。ゲストからの差し入れのとっても美味しい手作り細巻き寿司や、お口でとろけるようなチョコレートも並んで、あちらこちらから料理に手が伸びる。この日の主役モルテザさん
 そしてこの日の主役モルテザさんに次々と、おめでとうの言葉と、心からの笑顔、作品への絶賛の声が寄せられます。世界各地を渡り歩き、今神戸の町で作家活動を続ける彼にとっての大切な仲間たち。共に異国で暮らす者同士の絆、あるいは日々広がっていく日本社会との繋がり。彼は見るもの、感じるものを、常に写真という形にして表現して来ました。外国の香りがしたこの日のPAXREX ひとつひとつの作品には、彼が大好きだと言う神戸の町への愛と、そこに暮らす人々への細やかで、鋭い観察力が、怖いほどに込められています。
 彼の母国ドイツは、今アート最先端。世界をリードする勢いだと言われています。「何故日本では、写真アートが認知されないのか?」。祖国との違いを彼が熱く語る時、写真ギャラリー店主・ひろパパは静かにうんうんと相づちを打ちます。天使のようにかわいいちびっ子たちもそうそう、どないかせんといかん・・・よね?
 ともあれ天使のようにかわいいちびっ子たちが走り回り、さっぱりわからんドイツ語が飛び交い、時にイタリア語や英語も聞こえ、「おおっ、この匂い! 外国っぽい」。と途中参加のしょうさんが、扉を開けるなり鼻をくんくん、驚いたこの日のギャラリーPAXREX。世界は想像以上に身近で、小さなギャラリーは結構グローバル。
 ふ〜ん、どんなんかいな? 観てみようかいな? 絵のような写真、ニーチェの著作から取ったとやらの意味深い作品タイトル。あなたの好奇心、お待ちしています。

ギャラリーPAXREX
Decayー壊れてゆくー
Morteza Ariana
10月4日(土)〜11月9日(日)
11時〜19時(水曜定休)

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2008年9月23日 (火)

「Decay」展、早めのプレビュー

 神戸在住7年のドイツ人フォトグラファー、モルテザ・アリアナ。彼の目に今のこの国はどう映るのでしょうか? 辛らつなひと言・・・「壊れてゆく」。それが次回PAXREX展覧会のテーマです。
「壊れてゆく」。それが次回PAXREX展覧会のテーマ  モルテザさん自らが、今回の一連の作品テーマを「Decay」(崩壊や衰退の意味)としました。そんなあ〜! 平和な国なのに? 安全な国なのに? 規則正しくて、清潔で、秩序があって?
 便利な自動販売機は至る所に。コンビニは24時間明々と電気をつけ人を迎える。
 電車が3分遅れるとアナウンスが聞こえる。「お急ぎのところ、大変ご迷惑をおかけしまして・・・」。財布やケータイーを落とすと90%の確率で戻って来ると言われる不思議の国。
 でも「壊れてゆく」? 心の何処かで、小さくうなづきません? 確かに、やばいかもと。
 モルテザさんにとって、この国は母国ではありません。でも観光に訪れた国ではなく、ショートステイした国でもない。
 7年と言う歳月の中で、彼が日本を撮って生み出した作品。それが「Decay」。
昼下がりの公園、信号待ちの交差点、道ですれ違う男女。ふにゃふにゃと溶けていくように「壊れてゆく」モノがうごめいている。でも投げかけられた重いメッセージとはうらはらに、美しくて、洗練されたスタイリッシュなその作風。
 今在る現実をワープさせたような、艶やかな未来都市をふと垣間みる気さえする。それはモルテザ氏の、グローバルで、愛に満ちたパワフルなメッセージが込められているから?日本だけではなく、世界がやばいよ。壊れてゆくよ。でもこの世は美しい。そこに住む人々も。現代社会の現状を捉え、言葉を超えて愛を伝えようとするドイツ人アーティストと、アートを愛する気持ちがあれば、人は戦争などしないと言うPAXREXの想いとの出会い。そして今度は、あなたと出会えますように。ドイツ人フォトグラファー、モルテザ・アリアナの展覧会です

ギャラリーPAXREX 
Decay ー壊れてゆくー
Morteza Ariana
10月4日(土)〜11月9日(日)
11時ー19時(水曜定休)
※まもなく案内状を発送予定ですが、なにぶん数が多く、過去PAXREXにご来店の上、芳名帳に住所など記して下さった方々に行き渡らない場合がございます。悪しからずご了承くださいませ。
 暑さも和らいで、気持ちのよい秋へと向かう中、皆さまとギャラリーPAXREXでお目にかかれますよう、ご来店を心からお待ちしております。

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2008年9月14日 (日)

立体?無彩色?の源氏物語絵巻

 今年は源氏物語の千年紀だそうです。それを記念したさまざまな展覧会が各地で目白押し。なかでも、紫式部ゆかりの滋賀県・石山寺で12月14日(日)まで9ヶ月の長丁場で開催されている「源氏夢回廊」が、力の入れ具合からいっても白眉でしょうか。期間中、王朝文化を体感できるイベントや展示が次々と催され、当時の時代背景や風俗などを含めて日本が世界に誇る物語文学の全体像が楽しめます。今年は源氏物語の千年紀
 さて今回ご紹介するのは、和紙塑像家・内海晴美氏による「艶●源氏(えんげんじ)」展。あえて分りやすく言えば、人形で創り上げた源氏物語絵巻です。人形、なんてありふれた言葉であらわすのは大変失礼な、素晴らしい芸術作品なのですが・・・。和紙を素材に独特の技法で立体の塑像を作る内海さんは、パリで開催された「平家物語」展でフランス人を驚嘆させた優れた作家です。和紙塑像家・内海晴美氏による「艶●源氏(えんげんじ)」展 たまたま来場されたフランス文化相の奥様が、その場で「あなた、すぐ見にいらっしゃい!」と電話し、大臣が駆けつけたと言うエピソードもあるぐらい。
 「艶●源氏」展は代表的な16場面を計350体の像で表現した壮麗な絵巻です。彩色はせず、和紙そのものが持つ自然な色あいのみで構成された作品からは、かえって匂い立つような艶やかさや色香が感じられる。微妙な心の揺れや鬼気迫る情念をあらわした登場人物たち、群像場面のダイナミックな動き。京都と大阪でも観れます 思わず雅な世界へと引き込まれる完成度の高い作品展です。
 とまあ、見てきたように書いていますが、実はまだ作品は見ていません。昨年PAXREXで開催した「ビザンティンの美」展の写真家・赤松章さんが撮影された、内海晴美「源氏物語」作品集を何度も眺めては、現物が見られる東京の多摩にある美術館にぜひ行きたいと思っていたのですが、機会がなくて。そのうち所有者が変わった、などという噂を耳にしてほとんどあきらめていたところに、今度の朗報です。
 多摩まで行かなくても京都と大阪で観ることが出来る。これはぜひ皆様にもお知らせしなくては、そんな次第です。

内海晴美「艶●源氏」展
 京都 高島屋京都店
     9月10日(水)~22日(月)
 大阪 高島屋大阪店
     9月25日(木)~10月6日(月)
 

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2008年8月20日 (水)

“藤井保の世界”を観てください

お仕事中の藤井さん  藤井保さんに初めてお目にかかったのは2年位前です。クリエイティブ・ディレクターとして、長年一緒にお仕事をさせていただいていたひろパパと違い、けいママは緊張しました。だって現在日本広告カメラマンとしてトップに君臨する方、プロカメラマンを目指す若者の憧れのお方。
06年のカムイミンタラ展  「藤井さんって、どんな人?」とひろパパに尋ねると、「う~ん、顔は怖い」。確かにお顔は怖いです、少し。PAXREXで06年に開催したカムイミンタラ展。その会場準備の指揮を自らお取りになったのですが、藤井さんのアシスタントの坂野さん、一流スタイリストさん、“現場”なんて何のカンケーも無く生きてきたけいママにとって、それはピリピリした空気が張り詰めた、ただおろおろするしか無い世界でした。ハロゲンランプ
 そして藤井さんがこの小さな地下空間に創り上げてくださった“藤井保の世界”は今も忘れる事が出来ません。思っていたほど床が白くならないと、何度も塗りなおし。テーブルの置き方、本の並べ方、ライトの加減はもちろん、空調の温度まで! その細部に渡るこだわりにはただ敬服。東急ハンズに慌てて、買い物に走ったりもしましたっけ。ハロゲンランプの光り漏れを防ぐ黒い手作りシェードは、いまもPAXREXで活用させていただいています。
日本の数々の風景・・・  あれから2年・・・。ピンホールカメラという言葉にも「何それ?」だったけいママ、いや相変わらずな~んも分っていませんが、ただひとつ、ただひたすら分ってきた事があります。それは藤井さんの作品を観てこそ感じる、そこに込められた美学です。「その写真が果たして美しいか、人の心に残るものか。写真家は常にこの事を考えるべきだ」というお言葉そのままの。「Tokachi River」 ひろパパが愛して止まない作品「Tokachi River」。この作品を前にして、まずは考えます。日本にこんな場所があったの?と。そしてあったんだと納得して、さあそこからです。どこまでも引き込まれて行く。この川はいったい、どこまで続くんだろ? そこを辿っていくことは旅だろうか? それとも生きる事そのものだろうか? いつか自分が、とても悲しい出来事に出会ったとき、この作品を眺めたくなるだろうと、そう考えています。
Esumi_edited1  藤井保であることのこだわり。たとえば女優江角マキコさんをお撮りになった「ESUMI」にも。髪の毛があり、手があり、目のアップがある。ディテールを丹念に積み重ねていく事によって、単なるヌード写真ではない、神秘的なストーリーに満ちた、内面性豊かな江角マキコさんを観ることが出来ます。
 西日本では、PAXREXでしかご覧いただけない藤井保氏の作品の数々・・・。Esumi_edited1_2 最近出会った好きな言葉をあなたにも。「人が実際、その目で見たものに真実はありますから」。PAXREXで、実際に目にして下さい。ところで藤井さん、お仕事中は怖かったですけど、心使いの細やかな、それはもう優しい方でした。もしもご本人を前にしたら、きっとあなたも作品が生み出されるその素晴らしい人間性に納得ですよ。

ギャラリーPAXREX「藤井保の世界Ⅲ」展
8月23日(土)〜9月28日(日)
11:00〜19:00(水曜定休)

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