“藤井保の世界”を観てください
藤井保さんに初めてお目にかかったのは2年位前です。クリエイティブ・ディレクターとして、長年一緒にお仕事をさせていただいていたひろパパと違い、けいママは緊張しました。だって現在日本広告カメラマンとしてトップに君臨する方、プロカメラマンを目指す若者の憧れのお方。
「藤井さんって、どんな人?」とひろパパに尋ねると、「う~ん、顔は怖い」。確かにお顔は怖いです、少し。PAXREXで06年に開催したカムイミンタラ展。その会場準備の指揮を自らお取りになったのですが、藤井さんのアシスタントの坂野さん、一流スタイリストさん、“現場”なんて何のカンケーも無く生きてきたけいママにとって、それはピリピリした空気が張り詰めた、ただおろおろするしか無い世界でした。
そして藤井さんがこの小さな地下空間に創り上げてくださった“藤井保の世界”は今も忘れる事が出来ません。思っていたほど床が白くならないと、何度も塗りなおし。テーブルの置き方、本の並べ方、ライトの加減はもちろん、空調の温度まで! その細部に渡るこだわりにはただ敬服。東急ハンズに慌てて、買い物に走ったりもしましたっけ。ハロゲンランプの光り漏れを防ぐ黒い手作りシェードは、いまもPAXREXで活用させていただいています。 あれから2年・・・。ピンホールカメラという言葉にも「何それ?」だったけいママ、いや相変わらずな~んも分っていませんが、ただひとつ、ただひたすら分ってきた事があります。それは藤井さんの作品を観てこそ感じる、そこに込められた美学です。「その写真が果たして美しいか、人の心に残るものか。写真家は常にこの事を考えるべきだ」というお言葉そのままの。
ひろパパが愛して止まない作品「Tokachi River」。この作品を前にして、まずは考えます。日本にこんな場所があったの?と。そしてあったんだと納得して、さあそこからです。どこまでも引き込まれて行く。この川はいったい、どこまで続くんだろ? そこを辿っていくことは旅だろうか? それとも生きる事そのものだろうか? いつか自分が、とても悲しい出来事に出会ったとき、この作品を眺めたくなるだろうと、そう考えています。
藤井保であることのこだわり。たとえば女優江角マキコさんをお撮りになった「ESUMI」にも。髪の毛があり、手があり、目のアップがある。ディテールを丹念に積み重ねていく事によって、単なるヌード写真ではない、神秘的なストーリーに満ちた、内面性豊かな江角マキコさんを観ることが出来ます。
西日本では、PAXREXでしかご覧いただけない藤井保氏の作品の数々・・・。 最近出会った好きな言葉をあなたにも。「人が実際、その目で見たものに真実はありますから」。PAXREXで、実際に目にして下さい。ところで藤井さん、お仕事中は怖かったですけど、心使いの細やかな、それはもう優しい方でした。もしもご本人を前にしたら、きっとあなたも作品が生み出されるその素晴らしい人間性に納得ですよ。
ギャラリーPAXREX「藤井保の世界Ⅲ」展
8月23日(土)〜9月28日(日)
11:00〜19:00(水曜定休)
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