パタゴニアに住む志賀伸子さん
南米のアルゼンチンとチリにまたがって広がるパタゴニア地方。あのアウトドアウェアの有名メーカーも、ここから名前を取っているんですよね。今回の展覧会からPAXREX取り扱い作家に加わっていただいた志賀伸子さんが、ここに住んでおられます。自然に恵まれた、いいところなんでしょうね。近くにはマス釣りで有名な川が流れているそうですよ。南半球なので、今は冬。夜が明けるのは9時ごろで、スキー場もオープンしているとか。
志賀さんとはギャラリーを始める半年ほど前に東京でお会いして、作品を見せていただきました。ゼラチンシルバープリントの端正な作品で、「まるで長谷川潔のメゾチントのようだ。奥行きのある深い黒が美しいね」と言ったのを覚えています。あのフランス文化勲章を受章した巨匠です。ぜひPAXREXで展覧会をしてくださいと、お願いしたのですが、「間もなくアルゼンチンへ1年間勉強に行くので帰国してから」ということでその時は別れました。 その後、時々いただいたメールではアルゼンチンで映画製作に参加するなどご活躍の様子が。そして、よほど気に入ったのかそのままアルゼンチンに残って2年半。やっと先日、作品を送ってくださったので皆さまにご覧いただけることになったのです。この「菜園」シリーズは、東京をはじめ、チェコのプラハやハノイ(ベトナム)、プノンペン(カンボジア)などでも展覧会が開かれた作品です。
深みのある黒が美しいと言いましたが、もう一つの魅力は造形的なおもしろさ。美大の彫刻科で学んだ後、写真の世界に入ってきた志賀さんならではのセンスでしょうか。「かぶ」や「とうもろこし」「はくさい」「そらまめ」などが、日常見慣れた野菜の姿とはまったく違う、未知の生命体のように見事なフォルムで立ちあらわれている。
ときには妖しく官能的に、ときにはカラッとユーモラスに。見方によってさまざまな楽しみ方ができますよ。遊び心があふれるこれらの作品。 私たちがいろんな想像や妄想をしている姿を、志賀さんはどこかから眺めてほくそ笑んでいるのかもしれません。そうそう、「まいたけ」に目や唇がついた、志賀さんの代役のように画面の中から私たちを見ている、こんな作品も展示していますので、ぜひ見にきてください。
「PAXREX 夏 STYLE」展、8月10日(日)まで。
暑さを吹っ飛ばす、快い刺激が待っています。
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