小林鷹さんが撮る風景
「和花」の小林鷹さんが、風景やシーンを撮ると、やっぱりそこには“鷹ワールド”が生まれます。 ここはフランスのモン・サン=ミシェルですね。塩の干満の差が、ヨーロッパの中でも最も激しいと言われるサン・マロ湾。引き潮によって、修道院のある小島へのアプローチが開けるという・・・。これほど聖なる巡礼地と呼ぶにふさわしい場所は無いのでは? ダイナミックで、胸躍る序曲。やがて満潮とともに波間に消えるアプローチ。全てを消し去るかのような光景に、静かな満足感が胸を覆う。鷹さんのファインダーの向こうには、どちらもある、ある。引き潮も満潮も。プロローグもエピローグも。そして流れる時間も止まった時間も。
さてここは、どこだろ?草原に、ぽつんと小さな小屋が立っている。鷹さんの切り撮ったシーンには、だあれも居ないけど、居ないんだけど・・・ 。淡いグリーンの目をした、ひょろっとした体付きの女の子が、時々ここにやって来る。多感な少女は草原の風に、髪をなびかせて駆け回り、友達の居ないことを忘れる。あるいは年老いた老人が一人、恐ろしいくらい前から時々ここにやって来る。何のためだか、誰も知らない。花も、空も、星も老人の目には映らないような気がする。そのくせ湖の底みたいに深く澄んだその眼差し。。。な〜んて次から、次へとこのシーンに誰かを、何かを当てはめて、ひとときを過ごしてしまう。
決して行った事も無い、見た事もないのに何故か懐かしい風景があります。異国でありながら、そこには夕暮れになるとやっぱり灯りがともり、一つ、また一つとオレンジ色の光が窓辺に漂う。小さな路地裏をせかせかと我が家に急ぐ人の姿があり、食べ物の匂いが何処からともなくやってきて、鼻先をくすぐる。私が眺めるシーンと、私が我が身を置くシーンは違うんだけど、そこに繋がる糸を感じる。
鷹さんはどんな想いで、異国を旅するんだろ? 心惹かれるシーンと、実際に撮影したシーンは、ぴったりと寸分の狂いもないほどに重なり合うんだろうか? そんな意地悪な質問をしてみたいほどに、そこには穏やかで、静かな世界が広がっています。
時間は慌ただしく、日々は追われるように過ぎて行くのだけれど、だからこそ「SERENITY」な時間が、空間が、乾いた喉を潤す、清らかな水のように必要なのかも。
PAXREX
「SERENITY」小林鷹 写真展 〜静かに時は流れる〜
4月19日(土)スタートです。
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コメント
モン・サン=ミシェル!
一度は行きたいところ!
いつか・・・。いつの日か
投稿: しょう | 2008年4月10日 (木) 22時36分
世界遺産として、超有名な場所ですよね?
まずは鷹さんの、それはそれは美しい
オリジナル・プリントで行った気分になってください。
投稿: けいママ→しょうさんへ | 2008年4月11日 (金) 10時51分