ギャラリー店主「20人の天使展」を終えて
冬の夜空にオリオン座が瞬く。ホタル族のギャラリー店主、今晩もベランダでくゆらす白い煙が冷気の中に消えて行く。
「天使さま、今私のすぐそばにお出ででしょうか? それとも、もう遠くまで行ってしまわれたのでしょうか? いや、きっと近くにお出でですよね? 実はどうしても天使さまにお聞かせしたい事が・・・。“20人の天使展”開催中、PAXREXにエレガントで、物静かな年配の紳士がフラッとお見えになりました。 その方が来てくださったのは二度目だったのですが、何でも一度来たもののその後場所が分からず、もう無くなってしまったのかと思っておられたようで。でもこの日はちゃんとたどり着いてくださったんです。そして天使たちをご覧になり、こう言われました。「私は昔、稲垣足穂を知っていたのですが、もしも彼が見たら喜びそうな展覧会ですね」と。私の大好きな作家の名前が飛び出し、私はどんなにうれしかったでしょう。あの言うに言われぬ、幻想的なイメージの世界を描く稲垣足穂!
そして作品を見終わった後、こうも言われました。天使は何処にでも居るんですよ。こんな企画をされた、あなたも天使じゃないですか?」。いやいやと照れ笑いをしましたところ、去り際に言われました。「私はね、招き猫と言われてましてね。きっとここにもたくさんのお客さんが来られるでしょう。私が立ち寄ったからには。アッハッハ!」。ドアを開けてくるりと背を向けたその方の背を、私は思わず食い入るように見つめました。ひょっとしてこの方こそ羽根があるのでは?
天使さまでは?
天使さま、私の元にお告げを持ってきてくださってから半年以上、私の生涯を通じてこれほど天使さまを身近に感じたことはありませんでした。たぶん、これからも・・・。ですが、あの紳士が言われた通り、世界中のどこにでもあなたはお出でになるのだと、たとえお姿は見えないとしても、私の心の在りようで、いつでもお会い出来るんだと。決してお別れではないですよね?
私は小さなギャラリーの店主として、ひっそりとお客様を待つ日々を送ります。どうか天使さま、こんな私を暖かくお守りください。そして天使さまが軽やかに空を飛ばれる平和な日々が続きますように。
「何、ぶつぶつ言うてんの? ご飯よ!」 けいママに言われギャラリー店主、ぶるっと身を震わせて家の中に消えました。「20人の天使たち」がPAXREXに集う事はもう、決してありません。でもこれからも“天使”の話をしたいです、あなたと。
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コメント
2007年も終わりに近づいていますね。
PAXREXに初めてお邪魔し、ひろパパさんとけいママさんに出会った日のこと、
そして20人の天使達がPAXREXで静かに祈りを捧げたクリスマスのこと、
これからもずっと忘れることはないでしょう。
PAXREXでは、ひとつひとつの作品が呼吸をしている気がします。
投稿: まり | 2007年12月28日 (金) 01時33分
ひとつひとつの作品が呼吸をしているなんて!思わずグッとなってしまったコメントを有り難うございます。
写真がまだまだアートと認められない、今のこの国の現状・・・ ため息が出る日もあります、かなり(笑!)
そんな中"同志"に巡り会えた事が、私たちにとってどんなに心強かったことでしょう。
先日の「華楽園」では、ひろパパかなり饒舌でしたね?よほど楽しかったんだと思います。
お互いに、志は高く、歩みはゆっくりと行きましょうね。
投稿: けいママ→まりさんへ | 2007年12月28日 (金) 18時12分
かぜくさ便りの天使さまシリーズも終了ですか。とても楽しませていただきました。ありがとうございました。
投稿: Vn | 2007年12月29日 (土) 04時52分