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2007年11月25日 (日)

ヴェネツィア・ビエンナーレ(4)

 すこし間が空きましたが、ヴェネツィア・ビエンナーレヴェネツィア・ビエンナーレ(La Biennale di Venezia)見物記の続きです。 6月から半年あまりのビエンナーレも今月21日で閉幕。入れ替わりに「20人の天使」展が22日から神戸で開幕しています。(これ、PR) 

 ヴェネツィア2日目はマルテンポ(悪天候)のなか、アルセナーレへ。ここには世界中から選ばれた56人のアーティストの作品が、ずーっと続く広い会場に展示されています。みなさん真剣勝負の場なので、思いっきり力が入ってる。だから見る側も疲れます。ときどき肩をまわしたり、首をコキコキしたり・・・。
 最初にご紹介したいのはリヤス・コムの人物画。絶望の淵に沈んだような表情の連作にひかれて、思わず近寄っていました。リヤス・コムの人物画(ヴェネツィア・ビエンナーレ、La Biennale di Venezia) 一瞬パレスチナの少年兵かと思いましたが、ムンバイで活動する作家なので、多分インドの少女なのでしょう。でもこの深い悲しみは何なのだ。どうにもならない身分制度や貧困、また厳しい男女差別を、この少女は知ってしまったに違いない。それでも顔をもたげて、希望の光を求めて虚空を見ている。いま戦争がない地域でも、世界はこんなにも苦しんでいるのだ、と思い知らされました。
 もう1人、イランのY.Z.カミという作家の人物画。いまはNYで活動しているようですが、テヘラン出身というアイデンティティを感じずにはおれない表現です。Y.Z.カミの作品(ヴェネツィア・ビエンナーレ、La Biennale di Venezia) 抑えたやさしい色合いで描いた肖像画の大作。身近な人たちでしょうが、描かれた人はみんなうつむき加減です。そこには声高になにかを主張する姿はありません。じっと耐えているのか、沈思黙考しているのか、一見弱々しい人物像に見えますが、しかし岩のように動じない芯の強さがある。ガンジーの無抵抗主義を彷彿とさせます。
 いろんな表現手法があふれ百花繚乱に咲き誇っている会場で、地味ながらちょっと考えさせられる作品がありました。コロンビアのオスカー・ムニョスのモノクロ映像作品です。オスカー・ムニョスの映像作品ヴェネツィア・ビエンナーレ(La Biennale di Venezia) これは小ぶりなモニター3台(4台だったかな?)に、次々とさまざまな人物像があらわれては消える、というもの。あれ、リンカーンかな、キング牧師かな、と眺めていたのですが、よく見ると漆喰の壁に水で描いているようなのです。どんどん絵が完成に近づく。そして完成したと思ったら、だんだん消えて行く。ものの1分もたてば元の何もない壁に戻る。するとまた違う人物を描き始める。この「描く、消える」という行為を延々と映像化している。芸術の瞬間性と永遠性。絵画に限らずアート作品を残す、あるいは所有するという意味を改めて考えさせられました。
 

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[伊]ヴェネツィア・ビエンナーレ 07」カテゴリの記事

コメント

アートには世界を変える力があるよね。最近のアートブームはきっと「いろんなメディアがあって、情報がたくさんあるようでいて、でも満足できない。真実とは?」というような現状から来ているんじゃないだろうか、と思う今日このごろです。作品から何かメッセージを受け取るってのは「天使に会う」にも似た行為なのかも(これ、身内だからPRにつなげてみた)。

投稿: しょう | 2007年11月25日 (日) 15時34分

心ひかれるアートに出会った後は、モノも見方が変わります。
世界の見え方も変わります。
そんな多くの人の気持ちが集まって、結果、世界を変えてゆくのではないでしょうか。むずかしいことはわかりませんが・・・。
「20人の天使」展のPRもしてもらって、ありがとうございます。

投稿: ひろパパ→しょうさんへ | 2007年11月25日 (日) 21時05分

さすが、世界中から選ばれた作品だけあって、胸にド〜ン・・・ときますね。繰り返される生と死、人間の存在・真実など、答えの見つからないものを延々と想ってしまいます。この様な強いメッセージの大作を前にしたら、立ちすくんでしまいそう。
家にいながらにして、こんなすごいものを見せて頂けるなんて、かぜくさ便りバンザイです!

投稿: まり | 2007年11月25日 (日) 23時12分

このブログを見ていただいて感謝しております。
本当に重いテーマで中味が濃く、しかも大きな作品が多いので、こちらに迫ってくるパワーは凄いです。
見るほうも各作家と格闘技をしている感じ。充実した時間ですが、あとでグッタリ。こんなに軽く書いていいのかしら、という思いです。

投稿: ひろパパ→まりさんへ | 2007年11月27日 (火) 11時50分

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