ヴェネツィア・ビエンナーレ(6)
アルセナーレの長い建物を出て、いかにも昔の造船所らしい場所を抜け別棟へ。わずかに外を歩く間に傘は飛ばされビショ濡れになってしまいました。今回新たに設置されたイタリア館の別会場です。大木が2本、ごろんと横たわっているジュゼッペ・ペノーネの彫刻作品。よく見るとなにかの合成樹脂でホンモノそっくりに作ってある。隣の広い部屋に入ると、壁一面に樹皮(当然これも合成樹脂)を開いたものが何枚も貼り付けてあり、中央のスペースには樹皮をむいて製材した木が1本。
これだけの樹皮を集めるのに何本の樹が必要なのか。成長するまでどれほどの時間がかかったのか。生皮をはがれた森の悲鳴が聞こえてくるような空間です。文明社会は木をたくさん消費してきました。そして破壊のスピードは、森の自然な再生力をはるかに超えています。いま私たちに何が出来るのでしょう。それにしても寒い。見物客を見ると、すっかり冬のコスチュームに見えませんか?
その奥に、常設のパヴィリオンを持たない中国が新たに場所を借りて、ビエンナーレに参加していました。カオ・フェイ、カン・シュアン、シェン・ユアン、イン・シュツェン、4人の作家の共作です。 鉄の塊のような機械類がまだ残る工場の天井から、カラフルな紡錘形(?)のオブジェがいっぱい吊り下げてある。中世の騎士が馬上試合で使う槍のようにも見えましたが、きっと関係ないのでしょう。無骨な場所と作品とのギャップが面白い展示でした。
これで駆け足でまわったビエンナーレの見物記はおしまい。私たちのアンテナに引っかかった作品のいくつかを簡単にご紹介してきましたが、ほかにもいい作品はいっぱいありました。 2日間の見物では、メインの2会場だけでも大変で、島のあちこちにある他の展示を見てまわるには1週間は必要でしょう。それでもこんなに充実したアート三昧の時間を過ごしたのは久しぶりで、大満足!!
一番の収穫は、ジャンルやスタイルなどにこだわらず、新しい美しさや面白さを自分自身で発見するのがアートの喜びなんだ、と再確認できたこと。新しい美を発見すると、世界が違って見えてくる。暮らしが楽しくなる。大切なのは、それを見つける眼や意識をいつも持つことでしょうね。住み慣れた街やいつもの部屋の中にも、きっと美はあるはず。あれ、横丁のご隠居の説教口調になってしまった。(反省)
帰りのヴァポレットから見た雨に煙るサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会の鐘楼。見慣れた観光写真とは違ってしっかりアートしているように見えませんか?(じつはてっぺんにいるのは天使です)。
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