2014年10月 2日 (木)

たまゆら、竹久万里子のアート

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 六甲高山植物園とオルゴールミュージアムを結ぶ散歩道。長さ100mぐらいの木道、ゆるやかな坂の周辺の樹々に、それは設置されています。なんの変哲もないハイキングの写真、に見えますがその真ん中あたりの暗い部分に、白い点々がご覧いただけるでしょうか? これが竹久万里子さんの「たまゆら」という名の作品。それもほんの一部です。この白い点々は、じつはヒモで吊り下げられた鈴。太陽の光を反射して白く輝いているのです。その数は、ウン千! もしかしたら万を超えているかもしれない。

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 『たまゆら(玉響)』とは勾玉同士が触れ合ってたてる微かな音のこと。転じて「一瞬」あるいは「かすか」を意味する古語。この作品も、静かな大自然の中で、風が吹くと微かに音を立てる。しかも、あちらからも、こちらからも・・・。風の音や鳥の声、虫の声に混じって秘かに聞こえる人工的な音。しかしそれは決して不快ではない。じわっと包み込まれるような安らぎ。聞き耳をたて、五感を研ぎ澄ませ、自然の魂と直接対峙させるような不思議なパワーがある。強い力ではなく、惹きこまれるような静かな力。

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 「音に対する考察と、その音を生成するための仕組みを六甲山の自然にインストールしました。鑑賞者の感情を微かに、そして緩やかに揺り動かす空間をつくり出します」と、作家の竹久さんは言う。
 大自然、という開かれた空間を微かな音で区切る。いわば音の聞こえる範囲でこの世とあの世の境界を創造する。あるいは、教会の鐘が聞こえる範囲がわが村(味方)で、その外は恐ろしい別世界(敵)、という中世ヨーロッパのようでもある。しかもその境界は固定されたものではなく、微妙に揺れ動きながら変わり続ける。それこそが、このアート作品のテーマ=「たまゆら」そのものなのだ。

六甲ミーツ・アート 2014
2014年9月13日(土)~11月24日(月・祝)

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2014年9月29日 (月)

西山美なコ、甘~い夢

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 白いテーブルクロス、シルバーのカトラリー、きらびやかな食器やグラス。六甲高山植物園にある温室の中には、ピンク色を主体にした十数人分の午餐会のテーブルセッティングがなされている。かなり格調の高いしつらえだ。六甲ミーツアートの西山美なコの作品 「melting dream」がとってもオモシロイ。融けていく夢。宴が華やかであればあるほど、つかの間の輝きのあとは寂しいものだ。

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 午餐会のメニューは、前菜もメインディッシュもデザートも飲み物も、さまざまなピンク色のバラ。じつはこれらはすべて砂糖でできているのだ。お菓子の家ならぬ、砂糖菓子の食卓。気づいた時の大きな驚き、たくさんのディテールの発見、楽しく深く味わえる作品だ。室内は砂糖やバニラエッセンスの甘~い香がただよっている。自然の中なのでアリがいっぱい集まってこないかと、いらぬ心配をしてしまいそう。

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 視覚だけではなく嗅覚も刺激する、シズル感たっぷりの展示です。天井から吊り下げられたシャンデリアまで、砂糖のバラが飾られている、という徹底ぶり。スイーツ好きにはたまらない空間でしょうね。しかもこのバラの花の完成度が素晴らしく、花弁の質感まで再現されていて極上のアート作品に仕上がっている。しかも、この大掛かりの設定。たぶん一人分ならこんなに感銘を与えることはなかっただろう。アートはこのように打ち込む熱意の量によって見え方が変わることがよくある。

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 もうひとつこの作品で重要なのは、時間による変化。温室なので昼間は温度が上がり、六甲山の湿度とともに、会期中にじょじょに元の姿を融かして、美しくかつグロテスクにカタチを崩されていく。作家によると、「人間のつくったものも、どのように美しいものも、抗いがたい自然の力によって変貌させられ、崩壊していく様を表現しています」とのこと。時間という牢獄によって、甘い夢は儚く溶け落ちる。世の中に永遠のものはなく、だからこそ今という瞬間を大切に生きることが大切なのだ、と改めて考えさせられました。滅びの美学より、もっと積極的に、変化を作品の一部(主要なテーマ?)に取り込もうという姿勢も素晴らしい。

六甲ミーツ・アート 2014
2014年9月13日(土)~11月24日(月・祝)

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2014年9月26日 (金)

高谷敏正さんの『陶』展

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 『陶器』ではなく『陶』の展覧会である。いま神戸のGYALLERY北野坂で開催中の展覧会。『器』という字は、陶器、漆器、紙器、ガラス器など素材から使われる場合もあれば、食器、花器、酒器、なかには凶器なんてまがまがしいものまで、使い道で呼ぶ言い方もある。いずれにしても『器』というのはモノの役に立つ道具をいう。それから発展して、はたらきや才能を表す意味が出てきたはずだ。大器晩成などという使い方がそれです。

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 それはさておき、高谷さんが自分の個展を『陶器』展と名乗らず、『陶』展としたのは「生活の役に立つ道具」というには自分の制作哲学が違うところまで来てしまったからだろうと思う。もちろん役に立つ器を否定するのではなく、それよりも美しい、オモシロイを優先したほうが自分の意識に正直だ、と良い意味で開き直ったのでしょう。その結果、それがちゃんとアート作品になり、公募展に出品すれば必ず大きな賞をもらう、使える器も個性があふれ出る、という好循環になっている。どのジャンルでも勢いがある、乗っているというのはこんなことかもしれません。

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 もともと、建築家である彼が作る陶器作品は一般的な陶芸家の作品とは、まったく別物だ。作り方もおもしろい。まずイメージを設計図に書いて、それから作り始める。だから作り出す作品も、構築的なのだ。それこそ幾何学などを駆使して造形する。そしてそれを実現するための方法論を工夫して、新たに技術を発明しながら作り上げる。なかなか大変なことだと思う。しかし大変なことをしているんだぞ、というような気負いはまったくなく、むしろひょうひょうとしたユーモアを感じる。自分自身に自信を持っているからこその余裕の作風だ。
 「過去の名品を見るのも好きで、いいなと思うのも数多い。でもそれを目指したり似たものを作ろうとは一切思わない。常に今までになかったものを作ろうと考えています」という彼は、生粋のクリエーターなのでしょう。

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 曲線の美しいもの、直線の組み合わせが力強いもの、なにかヨーロッパ中世の城壁都市のようなもの、まるで年季を経た木材のような質感、思いがけない色の変化・・・。陶芸というのは「用の美」という言葉に代表されるように、「役に立つ」器を前提としてきた伝統の世界に、彼は新しい自由の風を吹かすチャレンジをしているのだ。観る側のイマジネーションに挑戦するような、と言って軽々しくオブジェなどと呼べない奥深く刺激的な世界を作り上げる彼の『陶』。機会があれば、ぜひこの世界に浸ってみてください。

高谷敏正 陶展

2014年9月23日(火)~28日(日)
GALLERY 北野坂
神戸市中央区山本通 1-7-17

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