2016年5月25日 (水)

マクベスを映画で観る

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 今年はシェイクスピアの没後400年だそうだ。一昨年の秋、ロンドンで再現されたグローブ座を見たが、丸い藁屋根の芝居小屋は今年は周年事業でさぞにぎわっていることだろう。さて今年はロンドンに行く予定はないので、神戸の映画館で『マクベス』を観ることにしました。(まったくカンケーない話ですね、スミマセン)
 舞台とスクリーンの違い、その一番は映像美。スコットランドの荒々しい自然が最高の美術セットになっている。弱い光、もやと霧が立ち込める寒々とした空気を、見事なカメラワークで切り取っている。この霧は「洛中洛外図屏風」の雲のように、場面の転換や次元の飛躍にも効果的に使われている。

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 二番目に表情アップの演技力。善と悪のせめぎあい、欲望と恐怖、自分でも抑えられない狂気・・・心の中の葛藤をアップで映る眼や口元で表現する、映画ならではの役者さんの演技力が試される。舞台ではもっと手の動きや体のこなしで、悲しみや苦しみを表しますが。
 三番目は21世紀の映画ならではの撮影技術、編集技術で生み出されるリアリティ。「お芝居のような」場面が、臨場感あふれるシーンに。コスチュームのデザインや質感も、中世の雰囲気がよく出ているし、その本物感をスクリーン上でしっかり表現できている。

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 未来を予言をする魔女。その甘い言葉におののきながら、自分の中の欲望に目覚める。野望はふくらみ、コントロールできなくなって錯乱に至る。もう元へは戻れない。それが破滅への道だとわかっていても、行きつくところまで行くしかない人間の悲劇。
 魔女にそそのかされて、道を誤る。その魔女は、人間誰もの心の中に潜んでいるのかもしれない。そう考えれば、小さなきっかけからどんどん深みにはまり、破滅へと突き進む人の話が現代のTVニュースで流れるのも当然でしょうか、シェイクスピア殿。
 

 

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2016年5月22日 (日)

横尾忠則のPOPとWAR

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 横尾忠則現代美術館でいま開催中の「私のポップと戦争」。とても懐かしく若き日を思い出しながら鑑賞しました。POPのほうは状況劇場のポスターや平凡パンチのカラーグラビアを飾った、懐かしい名作がずらり。1960年代後半から70年代半ばまで、グラフィックデザイナーとイラストレーターとして、またその時代を象徴する文化のトップランナーとして駆け抜けていったころの作品です。WARはもっと長い期間、画家宣言をした後の2000年代までの作品を含み、油彩やアクリルのタブローが中心。戦争がテーマというよりは自らの魂の奥底への遍歴を絵にした感じ。ただそこにはB29や原爆のキノコ雲も現れるので、横尾さんのWARには違いない。

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 別室に展示されていた「性風景Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ」と題されたシルクスクリーンの5点シリーズは、とても思い出深い。もう40年以上前の話だが、横尾さんに仕事を頼んだことがある。あるTV番組のタイトルデザインやポスターの制作だ。そのときテレビ局のスタジオに持ち込んだのが、これらの作品だったのだ。これは富士山や新幹線を背景にセックスしている、いわゆるアブナ絵だから、プロデューサーやディレクターは慌てました。でもそのまま放送で流すなんてことはするはずがない。黒バックに手書きの筆文字を抜いて、そこに色鮮やかなこれらの作品をパンしながら撮影した素材を入れ込む、というアイデア。何が写ってるかわからない、色だけのための素材。横尾さんはヴィデオの編集機を使うのが初めてだったらしく、おもしろがっていろいろ試しながら徹夜で制作を続けられたのが印象的でした。

Y+T MOCA
横尾忠則現代美術館
わたしのポップと戦争
2016年4月16日(土)~7月18日(月・祝)

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2016年5月19日 (木)

金沢にて、日本の色

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 さすが金沢、日本の伝統文化とそれを象徴する美しい色が街を彩っている。だから外国人観光客も多い。たとえば兼六園ではカキツバタがいま盛りを迎えている。尾形光琳の屏風で見るように、紫の花と緑の葉の組み合わせがハッとするほど鮮やかだ。

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   ヌメッとした独特の瓦屋根が美しい、江戸時代の遊郭の風情を残すひがし茶屋街。格子戸と石畳の道を、若者がひく観光人力車が行き来しているが、とてもよく似合っている。文政三年(1820年)に建てられ、その当時のまま残っている重要文化財の「志摩」が見学できる。ベンガラ色の壁、漆塗りの柱、七宝焼きのふすまの取っ手・・・金沢文化の粋が凝らされている。

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 金沢はまた金箔の街としても知られている。いまは日本のほとんどを生産しているそうだ。みやげものも工芸品やアクセサリーはもちろん、化粧品やエステ用品、お酒や焼き菓子など、あらゆるものに金箔が使われている。

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 有名なお店の中庭には金箔を張り詰めた蔵もありました。金色というのは屏風の下地でわかるように日本の色によくマッチする。光の当たり方で華やかにもシックにも見えて、まわりの色がよく映える。
 春から初夏にかけての金沢の色を紹介しましたが、これを光の弱い雪の季節に見るとまったく別の美しさをあらわします。奥が深い街です。

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