2022年5月20日 (金)

「奇妙」と「普通」の境界線

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 世界は奇妙なモノにあふれてる。しかしそれらは我々にとっては奇妙でも、現地では普通だったりもする。文化、風習、建物、自然に至るまで。古代の遺跡から現代の遊園地まで。多種多様で驚きに満ちた光景を見せてくれる写真作品の展覧会が、西宮市大谷記念美術館で開催されている。『佐藤健寿展 奇界/世界』。

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 では「奇妙」って何だろう。海水浴客でにぎわうビーチのすぐ上を飛ぶジェット旅客機。こんなに低かったら危ない!と思いますよね。でもよく見ると浜辺で遊ぶ人たちがみんな飛行機に手を振っている。異常ではなく日常。ここでは「普通」のことなのだ。58カ国で撮影された作品からは、人間の営みのおかしみが伝わってくる。

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 「奇妙」と「普通」の境界線は、時代によって、場所によって、人によって、それぞれ違う相対的な基準。その「境界」は未知なるものを目にするたびに、揺らぎ、拡がり、新たに線引きされる。展覧会場で出会う謎だらけのキッチュやグロテスク。これらを目にした後は、間違いなく「こちら側」が拡がったと感じるハズだ。

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 UFOやネッシーや雪男。ピラミッドの秘密やナスカの地上絵。1978年生まれの佐藤健寿は、80~90年代に流行ったそんな怪奇現象や不思議を集めたオカルトTV番組を見て育ったという。そして20年間にわたり、興味と好奇心のおもむくままに地球を旅し、理解を超えた異文化をカメラで記録してきた。その情熱も普通じゃない?

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 ドキッとしたのが軍艦島の朽ち果てた建物の写真。毎日のようにニュースで目にするミサイル攻撃されたウクライナのビルにそっくりなのだ。ショック。それって想像力がぐんとブラッシュアップされたってこと? まさか彼もここまでは予想しなかったでしょう。人が新奇を知るごとに『奇界』は『日常の世界』に浸食されていく。

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 彼は会場のあいさつで書いている。~「奇界遺産」というテーマで長い旅をしてきて今思うことは、この世界に「奇妙なもの」はそもそも存在しないのではないか、という逆説だった。それはただ私たちが考える「普通」の「境界」の外側にあるが故に、そう感じるに過ぎない。~  もう安直に「普通」という言葉は使えなくなりました。

佐藤健寿展 奇界/世界
2022年4月2日(土)~6月5日(日)
西宮市大谷記念美術館

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2022年5月17日 (火)

時間について考える

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 「私は幸せを模索する、普通の人々に興味がある」と語る、リチャード・カーティス監督・脚本の『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』。2013年の傑作ロマンチックコメディです。コーンウォールの海辺の家に住む、自分に自信が持てない青年ティム。21歳の誕生日に父親から一族の男たちの衝撃の秘密を知らされる。

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 なんとタイムトラベルの能力が、代々の男たちに受け継がれているというではないか。風変りだが愛情深い家族に囲まれて育ったシャイなティムは、この能力を使って恋を成就しようと奮闘する。つまづいてしまった彼女との出会い。これをタイムトラベルでやり直す。何度も、何度も。誠実で一生懸命なのだけど、なぜか空回り。

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 誰にでも思い当たる青春のトキメキ。身近にいそうな親しみやすいキャラクター。ウイットに富んだ会話。登場人物たちを見守る監督の温かいユーモア。それらすべてが心地いい。タイムトラベルという視点を加えることによって、家族や恋人と過ごす平凡な日常の大切さが逆に浮き彫りにされる。うまい手法だと思います。

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 今日という日をしっかり生きる。それが人生を素敵にする秘訣。そしてまた、過ごしてきた時間の積み重ねが、人生に彩りをもたらしてくれる。この映画のタイトル、『アバウトタイム』は時間の愛おしさ、時間の豊かさについての考察という意味でしょう。タイムトラベルは時間を物語るための手段であって、目的ではないのだ。

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 主人公ティムを演じるドーナル・グリーソン。恋人から愛妻へ、彼の人生の喜びを共にするメアリー役のレイチェル・マクアダムス。タイムトラベルという秘密で結ばれた父親役のビル・ナイ。キャスティングも見事でした。タイムトラベルを繰り返す軽いコメディの前半から、逃れられない死と家族の絆の物語へ。感動を生む構成でした。

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2022年5月14日 (土)

キューバサンドが食べたい

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 肉が焼けるニオイ。野菜を刻む包丁さばき。ベニエを揚げる音。これでもか!というぐらい「ウマイ」がいっぱいの映画です。あふれる調理シーン&食べるシーン。しかもそれらは高級レストランの料理とは限らない。屋台の名物料理もあれば、家庭でササっと作るパスタやクロックムッシュも。シェフがほんとにウマイと感じる味。

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 ジョン・ファブローが製作・監督・脚本・主演を務める『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』がおもしろい。しかし観ていると猛烈に食欲が湧き起こる。主人公はLAの高級レストランの有名シェフ。斬新なメニューに挑戦しようとした彼は、保守的なオーナーと衝突してクビになる。失意の彼は、息子と元妻とマイアミへ向かうハメに。

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 そこで出会った新しい味がキューバサンド。「これだ!」とひらめいた彼は、ボロボロのフードトラックを手に入れて息子と一緒に改造。商売を始めると、これが大当たり。マイアミから、ニューオリンズ、LAへと移動販売をしながらアメリカ横断の旅。疎遠だった息子も調理を手伝ううちに、徐々に親子の気持ちが通じあっててくる。

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 この映画は7~8年前の作品なので、SNSの理解度のギャップも面白おかしく取り入れている。メールとツイッターの機能の違いを理解していない父親と、SNSを軽々と使いこなす10歳の息子。慣れていないばっかりにヒドイ目に合うエピソードも笑えます。逆に息子がSNSで商売のPRをしてくれていた、という裏話も泣かせます。

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 なかなかよくできたハートフルコメディですが、困ったことに食欲全開。キューバサンドが食べたい! できれば本場の。それから、なんとなく思ったのだけれど、ヤセた料理人は信用できないなと。ゴメンナサイ。なんとなくですから。またダスティン・ホフマンやスカーレット・ヨハンソンが出演しているのも驚きでした。カメオじゃなく。

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