2020年4月 6日 (月)

メスキータ 没後75年

   Photo_20200404182201

 19世紀末から20世紀初頭に活躍したオランダの画家で版画家でデザイナーのサミュエル・イェスルン・メスキータ。彼は美術学校で多くの学生を指導。だまし絵で有名なM.C.エッシャーも教え子の一人だった。そしてメスキータから大きな影響を受け生涯の師として敬愛したという。白と黒の対比が鮮やかな作品群を見ると、たしかにその画風がエッシャーに受け継がれているのがわかる。

Photo_20200404182202

 エッチング、ドローイング、水彩画などいろんな技法を使ったメスキータですが、彼の特徴は木版画に最もあらわれていると思う。木版ならではのシャープな線。効果的な明暗のコントラスト。計算されたモダンな構図。身近な人々を描いた肖像画も、自然界の動物や植物を表現した作品も、いまなお力強いインパクトを与える。自由なモノの見方や時代を超えた造形力は、とても現代的。

2_20200404182201

 ユダヤ人のメスキータはすでに70歳を超えていたが、1944年ゲシュタボに逮捕されアウシュビッツで亡くなる。逮捕のあとアトリエに残された膨大な作品の一部は、エッシャーや友人たちが決死の思いで救い出し、命がけで守り抜いたそうだ。そして彼らは戦後に展覧会を開催し顕彰に努める。そのおかげでメスキータの名前と作品が今日まで残ったのです。これは幸いでした。

   Photo_20200404182203

 悲劇的な最期から75周年を記念して、昨年東京ステーションギャラリーで開催された日本初の回顧展。新型コロナ騒ぎのさなか、西宮に巡回してきました。マスク着用の義務や入口に手指の消毒液が置かれているのはもちろんですが、混雑防止のため2時間の時間指定が書かれたチケットを渡される。そして他の観覧者とは2m離れるように、とのこと。いまは展覧会などイベントの開催には細心の準備と覚悟が必要なのだ。ご苦労さまです。

メスキータ展 Mesquita
2020年4月4日(土)~6月14日(日)
西宮市立大谷記念美術館
 

| | コメント (0)

2020年4月 3日 (金)

タイトルは「接触感染」

  Photo_20200402171801

 2011年に公開されたという映画『コンテイジョン Contagion』は、この度の新型コロナを予見したような内容で話題になっている。で、定番になったNETFLIX 巣ごもり鑑賞。たしかに、恐ろしいほどこの数か月の状況に符合する。2002年に中国の広東省から起こったサーズ SARS 流行時の医学的な知見や社会的な不安の経験が活かされているからに違いない。ドアノブ、グラス、エレベーターのボタン、電車のつり革・・・。近未来(製作時は)の未知の接触感染症をテーマにしたパンデミック映画です。

Photo_20200402170603

 物語は香港から始まるし、感染力は強いし、あっという間に世界に広まるし。ふんふんと観ているうちに引きこまれる。感染経路をたどる。医療従事者に犠牲が出る。都市が封鎖される。デマが拡散する。パニックになって暴動がおこる。ワクチン開発も思惑や利権が絡んですんなりとは進まない。まさに今、世の中はこの映画をなぞるように動いているからコワイ。ドキュメンタリータッチでリアルに表現するスティーブン・ソダーバーグ監督の手腕は確だ。

Photo_20200402170701

 個人の愛や悲しみと社会的責務との葛藤。さまざまな規制が立ちはだかるなかでワクチンの研究開発。医療崩壊を防ぐため時間との闘い。人の行き来も、情報の伝達も、圧倒的に速く広くなった現代。政策の決定も何よりスピードが求められる。そして政府や行政は正確な情報を的確に流すことが必要だ。人々を物資の買い占めに走らせるのは、情報不足による不安感から。他人事のように無自覚にふるまうのは、感染症ウイルスに対する無知から。

Photo_20200402170601

 NYのコロンビア大学公衆衛生大学院が制作する新型コロナに関する解説動画に、『コンテイジョン』に出演したマット・デイモンやケイト・ウインスレット、ローレンス・フィッシュバーンなどが出演。デイモンは「映画のなかで、僕は世界中に蔓延する架空のウイルスに免疫がある男を演じました。いくつかのことをはっきりさせておかなければなりません。まずあれは映画で、これは現実です。僕が新型コロナウイルスに免疫があると信じる根拠はありませんし、あなたも同様です。どれだけ若いとしても」と語っているそうだ。


 
 

| | コメント (0)

2020年3月29日 (日)

ローマ教皇も人間なんだ

   Photo_20200328223901

 こんな面白い映画なら、昨年末に公開されたときすぐに見ておけば良かった。フェルナンド・メイレレス監督の『2人のローマ教皇』、最近多くなったNETFLIXオリジナルです。ベネディクト16世が退位する前年にアルゼンチンからベルゴリオ枢機卿をローマに呼んで、二人で数日にわたり対話をする。これがストーリーの核。カトリックの総本山ヴァチカンの舞台裏に迫る人間ドラマです。

Photo_20200328223902

 教皇庁No.2の官房長官のような役職を長年務めたドイツ人の教皇。厳しい保守派の代表で、演じるのはアンソニー・ホプキンス。片やジョナサン・プライス演じる慣習にとらわれないアルゼンチン人の枢機卿は、ピッツァとサッカーを愛する庶民的な改革派。考え方も経歴も正反対の二人がお互いの違いを踏まえながら理解を深めていく。その後ベネディクト16世の退位により、ベルゴリオがフランシスコ教皇となる。実話を基にしているだけにリアルだ。

Photo_20200328224001

 宗教界のトップに上り詰めても「人間だから完璧じゃない。罪も犯す」と言えるスゴさ。いろんなスキャンダルで揺れるカトリックの起死回生PR映画、かと思いきやとても見ごたえがある感動作です。二人の運命が交わる2005年ヨハネ・パウロ二世の死によるコンクラーヴェ、2013年ベネディクト16世の引退によるコンクラーヴェ。同時代の歴史を作ったローマ郊外の夏の離宮やシスティーナ礼拝堂のロケが印象的です。そして2018年ブラジルW杯決勝(ドイツ vs アルゼンチン)をTV観戦する二人が人間らしくて好感が持てました。

| | コメント (0)

«あらためて、最強のふたり