2017年11月18日 (土)

湖畔に建つイタリア大使館別荘

Photo
 奥日光。明治中頃から昭和にかけて中禅寺湖畔は欧州各国の大使館別荘が立ち並ぶ国際避暑地で、「夏場の外務省」と呼ばれるほどの賑わいがあったそうだ。今は公園として整備され、そのうちのいくつかは見学できる。豊かな自然、湖と山の景観、優雅な生活スタイル。タイムトリップしたかのような感覚を味わえます。

Photo
 イタリア大使館別荘はアントニン・レーモンドの設計により昭和3年に建てられ、平成9年まで歴代の大使が使用していた。レーモンドはフランク・ロイド・ライトのもとで学び、1919年に帝国ホテル設計・施工の助手として、ライトと共に来日。その後独立して日本に残り、レーモンド事務所を開設。そして多くの名建築を残し、多くの日本人建築家を育てた著名な人なのだ。(知らなかったけれど・・・)

1
 ここの最大の魅力は、地元産の杉皮張りで仕上げられた内外装。タテ、ヨコ、ナナメ、市松模様など、天井も壁もさまざまなパターンで張られた杉皮が美しい。日光の大工が伝統として洗練させてきた技術を、徹底して活かしたうえにさらに発展させている。日本家屋と欧米生活様式の融合を図ったディテールは、ほんとに見事としか言いようがない。暖炉のある書斎、中央のリビングルーム、食堂スペースがワンルーム空間に並んでいる。そして中善寺湖や男体山の景観を楽しむ開放感あふれる広縁がその外に続く。

Photo_2
 四季折々の自然を楽しめる豊かな環境。ゆったりと配置された本邸と別邸。パーティや買い物など外出に使うヨット用の桟橋。戦前のヨーロッパ上流階級の避暑生活を彷彿とさせます。ただ美しいだけじゃなく、ゆっくり流れる時間を心から楽しめる居心地の良さ。日本に対するリスペクトも感じられて、見学する我われも居心地が良かったです。

Photo_3
 お隣は英国大使館別荘。こちらの建物は新しく建て直されたようで、建築的なおもしろさを求めるよりも、紅茶とスコーンで英国文化に親しむのがいいでしょう。これらが立ち並ぶのは、中禅寺湖の主な観光スポットの対岸にあたる静かなエリア。すこし回り道をしてでも立ち寄る価値は十分あると思います。

イタリア大使館別荘 記念公園

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年11月15日 (水)

軽井沢の光を浴びる美術館

Photo
 西沢立衛による建築が見どころの軽井沢千住博美術館。敷地の自然な勾配や高低差を生かしてそのまま床面にした、西沢さんらしい建築です。豊島美術館やローザンヌ連邦工科大学ラーニングセンターなどでもおなじみの手法だ。土地の起伏そのままにゆるやかに傾斜した白いコンクリートの空間。美しい曲線を描くガラスで囲まれた光の中庭。そこに植えられた樹々が季節の表情を映し出す。

Photo_2
 人工的な建築物なのに、まるで有機体の体内に入ったような不思議なやすらぎが感じられる。風のまにまに、光のまにまに、自然のまにまに。床も屋根もガラスの壁も、フリーハンドで描いたような自由な曲線。生命体ってこういうものなんだ、と感じられる。敷地内の植栽はカラーリーフガーデンと呼ばれている。建物の周囲には色とりどりの葉を持つ木々や多年草が植えられ、ガラス壁の内部に植えられた木々と呼応。外と内の境界がぼやけてまる森の中にいるようだ。

Photo
 個人美術館なのにアーティストの話が後回しになって、千住さんには大変失礼いたしました。「千住博さんと言えば、ウォーターフォール」という形容詞で語られる、滝をモチーフにした作品シリーズが世界的に有名だ。絵画を突き詰めて哲学的な高みにまで到達した世界が展開されている。館内すべてがワンルームというか区切りがない空間に、高低差や光の中庭などでゆるやかにスペースが分かれ、作品群がかたまりごとにゆったりと配置されている。

Photo_2
 見ものはこの美術館の、この時期の企画展のために制作された映像作品「四季」。最初から動くことを前提としたアニメーションとは異なり、静止画である絵画を最新の映像技術によって動かそうとしたもの。静謐な滝を見ているうちに、ふと気付くと止まっていたはずの水が動き出し、水煙を上げて落下している。やがて桜や紅葉や雪景色が重なり、宇宙空間にまで変貌。それもやがて元の静止した滝に戻る。言葉にならない深い深い感動をおぼえました。

軽井沢千住博美術館

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年11月12日 (日)

内村鑑三と石の教会

Photo
 軽井沢の星野リゾートエリアに、内村鑑三の思想を具現化した石の教会がある。ケンドリック・ケロッグの設計によって1988年に建てられた、唯一無二なオーガニック建築だ。自然の森の中に、重なり合う石のアーチとそのすき間のガラスのアーチ。うずくまる恐竜のようでもあり、太古からこの地に存在した巨岩を掘り起こしたようにも見える。
 「屋内も自然そのもの」という理念のもと、「生きている建築」を実感できる。ふりそそぐ光、水は流れ、緑は光合成をし、木々は呼吸し、石は静かにたたずむ。

Photo_3
 内村鑑三については名前は知っているが、その業績についてはよく知らない。それで説明文などをもとに書きます。スミマセン。内村は明治・大正時代の思想家・キリスト者で、無教会主義を唱えた。教会とは建物や制度のことではなく、祈りたい人が心から自由に祈れるすべての場所が真の意味での教会である、という思想。石の教会は何ものにも縛られない純粋な自分を感じることができる無垢な祈りの場だ。だから十字架も祭壇もない。もはやキリスト教という宗教も超えているのかもしれない。

Photo_2
 教会の地下が資料展示室になっており、自作の言葉を書いたユニークな直筆や新渡戸稲造やクラークと写った札幌農学校時代の写真。アメリカ留学時代から教員、新聞記者、伝道者などをしながら、聖書の研究に一生をかけた内村鑑三。『余は如何にして基督信徒となりしか』や『代表的日本人』などの著書や、不敬事件や足尾銅山鉱毒被害者の支援、非戦論など社会活動家としても稀有な存在だったのだ。

石の教会 内村鑑三記念堂

| | コメント (0) | トラックバック (0)

«両国の北斎美術館へ