2019年10月22日 (火)

金の鶏、ランタン、風の力

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 六甲ミーツ・アート2019の作品を、これから何回かに分けて順次ご紹介していきたいとます。
 オルゴールミュージアムのそばに池がある。この池の中に浮かぶ小さな島は、アーティストに作品の制作と展示について強いインスピレーションを与えるようだ。毎年かなりの力作に出会えます。今年は若田勇輔の「The Cock」。六甲山には神功皇后が金の鶏を埋めたという伝説が伝えられていて、その話を基にプラスティック製の金色の花びらを集積して作ったそうだ。

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 オルゴール館から高山植物園に向かう木道沿いには、数百本の黒いオブジェがススキのように風に揺れている。中森大樹の「Texture of Energy」だ。風を受けて揺れ動くことによって発電して光る、という作品。細い棒の先につけられた発電素材とLEDを使って、風の強さや吹く方向で明るさや動きが変わるそうだ。目に見えない風のエネルギーを可視化するのがアーティストの狙い。昼間もいいけれど、もう一度暗くなってから見に来なくっちゃ、と思いました。

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 高山植物園内にある映像館。その廊下を使った栗真由美の「builds crowd AMAGASAKI」がおもしろい。軒お先から吊り下げられたたくさんのランタン。光る雲のような上部と可愛い家形が集まった下部。家々の明かりはぬくもりや郷愁をかきたてます。母に抱かれて夕方の買い物に出かけた幼いころの記憶。ほのかな匂いまでよみがえってきそうです。

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 近づいて見ると、ランタンになっているのはすべて実在の商店や建物。尼崎の商店街を取材して写真を撮り、ランプシェードのように天井から吊り下げた。焼き肉屋にカラオケ屋、居酒屋にバイクショップ。ビリケンさんのお堂まである。とても緻密な作業がリアリティを与えているんだ。雑多なお店が好き勝手にデザインした看板を並べた商店街。そのカオス的状況が生み出す人間的な温かさと居心地の良さ。うまく表現しています。

六甲ミーツ・アート
芸術散歩 2019
2019年9月13日(金)~11月24日(日)

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2019年10月19日 (土)

オルゴールと宇野亜喜良

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 六甲オルゴールミュージアムの開館25周年を記念した演目が『宇野亜喜良のシンデレラ』。彼が描いた絵本「シンデレラ」(フレーベル館)のイラストを大きなスクリーンに投影し、お話を朗読する。そして場面に合わせて古き良き時代のディスク・オルゴールや自動演奏ピアノの音楽が奏でられるオルゴールシアターです。いまだ健在、幻想的な宇野亜喜良のイラストに、どこか懐かしく祝祭的な華やかさを持つアンティーク・オルゴールの音色が見事にマッチ。観客をメルヘンの世界へ誘います。

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 このオルゴールシアターは「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2019」の作品のひとつ。第10回目を迎えた今年の秋も、六甲山上は現代アートに出会う楽しさを求めて多くの人たちが訪れています。大自然のなかに点在するアート作品を歩いて巡るミーツ・アート。さわやかな季節のイベントとしてすっかり定着してきました。ライトアップなどで夜景と一体に楽しめる作品のほか、今回は「ザ・ナイト・ミュージアム」と称する夜間のみ見られる作品も3点あります。

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 展示されている合計44点のアート作品。「芸術散歩」というサブタイトルがついているように、ハイキングがてら歩いて観て回るのが健康的で気分もいい。とは言え山の上の広いエリア。何日かに分けて鑑賞できる時間の余裕がある人なら可能ですが、普通は六甲山上バスで効率よく動くことになる。先日の台風の被害で補修中の作品もありましたが、これも野外ならでは。空と緑と大地に包まれたアート鑑賞は、美術館にはない魅力がいっぱいです。

六甲ミーツ・アート
芸術散歩 2019
2019年9月13日(金)~11月24日(日)
 

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2019年10月16日 (水)

バウハウスが100周年

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 これはBauhaus!展の入場チケットです。若いころは(はるか遠い昔ですが)先輩デザイナーが発する「バウハウス」という音の響きだけでも、うっとりするほど神々しい存在でした。1919年、グロピウスによってヴァイマールに開校されてから100年。ナチスの弾圧を受けて1933年に閉鎖されるまで、わずか14年と短い活動期間でしたが、後世のアートやデザイン界に多大な影響を与えた造形学校です。いわばモダニズム建築やモダンデザインの偉大な神殿のようなもの。合理主義的、機能主義的な美の世界。

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 100周年のいま、この実験精神に満ち溢れた伝説的な教育機関を見直し、ユニークな授業内容や作品を紹介する展覧会が『きたれ、バウハウス』。西宮の大谷記念美術館で開催中です。建築、金属、陶器、織物、家具、印刷、広告、舞台美術など様々な分野での成果や資料など約300点を展示。教師陣の顔ぶれがスゴイ。グロピウス、ミース・ファン・デル・ローエ、パウル・クレー、カンディンスキー、モンドリアン、マルセル・ブロイヤー・・・名前を聞いただけでワクワクする。時代を代表する芸術家が指導していたのです。

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 時代を代表する芸術家が指導する革新的な授業の一部を体験できるのがおもしろい。色分けされたプレートを回したらどんな色に見えるかを体験する「回転混色」、光線の色とそれにより生じる影の色の関係を体験する「色の影」、円と正方形と1/4円の3つを要素にしてアルファベットや数字を作る「組み合わせ文字」などなど。頭で考えるだけではなく、実際に見て触れて手を動かして、五感をフル活用する教育。アカデミーで絵画を習うか、親方について修業するしかなかった時代に画期的です。

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 優れたデザイナーや建築家を輩出したバウハウスですが、ポストモダン、ポストポストモダンなどの流れを経て、いつしかカビが生えかけたレトロな趣になってしまいました。でも改めて展覧会を見てみると、永遠に新しいと感じる。それは学校の基本方針である、想像力を刺激し創造性を引き出す、という理念。伝統からも社会常識からも自由に、より美しいもの、より良いものを目指す姿勢。これからどんなに時代が変わっても、バウハウス流のモダニズムはひとつの指針として美の底流にずっと続いていくことでしょう。

きたれ、バウハウス
造形教育の基礎 開校100年
2019年10月12日(土)~12月1日(日)
西宮市大谷記念美術館

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