2023年11月30日 (木)

安藤建築の昔と今

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 前回に続き、神戸モダン建築祭の報告です。1977年にできた北野のローズガーデン。打ちっぱなしコンクリートが代名詞の安藤忠雄さんの作品ですが、これはレンガとコンクリート。でも吹き抜けの中庭をめぐる階段の空間処理などに、安藤建築の魅力が満開。2Fのアメリカンダイナーは空室になっていた。今後どうなるのでしょう。

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 印象的なベンガラ色の壁と黒い梁。アメリカンなテーブルにシート、カウンターとスツール。ジュークボックスやピンボールも、とりあえずと言う感じでそのまま残されている。いいモノなんだけど、、、モダン建築の保存については難問山積だ。イベントの趣旨からすると異色なのが、東遊園地にできたばかりの『こども 本の森 神戸』。

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 安藤さんが建物を作り、中に収める書物も選び、そっくり神戸市に寄贈した図書館だ。最新の安藤建築が、過去の名建築に肩を並べてモダン建築祭で見学できるのはうれしい限り。「モダン建築」と言う言葉からは、第二次世界大戦以前の、少なくとも20世紀の、というイメージがある。でも自由に柔軟に解釈してもいいと思います。

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 さてこの図書館、本の表紙が全て見えるように並べられた設計が素晴らしい。しかも蔵書の選択が最高。こども図書館と思って入ったのに驚きました。『こども 本の森』という名前ですが、大人でもウナル興味深い本がズラリ。もし可能なら、毎日ここに通いたい。昔こんな図書館があったら人生が変わっただろうな、本当に。

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2023年11月27日 (月)

モダン建築祭で北野へ

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 11月24日(金)、25日(土)、26日(日)の3日間、神戸でもモダン建築祭が開催されました。港町神戸の記憶を受け継ぐモダン建築が特別に公開されるイベントです。大阪や京都では開かれていましたが、神戸では初。普段は一般公開されていない建物・部屋を見学するため、パスポート片手に北野の異人館街へ向かいました。

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 北野メディウム邸(旧スタデニック邸)やシュウエケ邸はテラスが広いコロニアル様式に、屋根にはシャチホコが載っていたり、明治時代に日本に来て住んだ西洋人の趣味嗜好がうかがえて面白い。庭も芝生にソテツと松がバランスよく折衷された美意識。中華民國留日神戸華僑總會には、部屋の中に蒋介石の肖像画がある。

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 サンルームにはゆったりくつろげるソファが並ぶ。壁やサイドテーブルには錦絵や象牙の細工物が飾られている。テーブルセッティングも再現されていて、ヴェネツィアングラスが並ぶ。カーペットもたぶんペルシャの高級品なのでしょう。港町なので貿易で財を成す外国人が多かった。異人館はそんな人たちのお屋敷なのです。

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 異人館でフツーに見かける、手の込んだ細工の階段の手すりやドアノブ。今ではもう作れる職人さんがいない。アルミサッシの窓をはじめ、なんでも工場での大量生産になってしまった現代。わずか百数十年で、建築工法からディテールの技までこの変わりよう。建物を残すのはもちろんだけど、補修技術を残すのも大切ですね。

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 法隆寺や姫路城など国宝級の建築物は誰も保存に異存はない。しかし近代のモダン建築となるとそうはいかない。誰かが意識的に保存を考えないと無くなってしまう。すべて経済性だ。個人に押し付けるのは無理があるし、税金を使うのも難しい。このイベントがそんな問題を考えるキッカケになればいいなと願っています。

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2023年11月24日 (金)

堀尾貞治の千点絵画

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 神戸のBBプラザ美術館で、いま『堀尾貞治 あたりまえのこと 千点絵画』展が開催中です。ギャラリーPAXREXにも毎週のように来ていただいていた堀尾さん。もう亡くなって5年になるんですね。あの「具体」のメンバーで、亡くなる前日まで毎朝欠かさず続けていたというドローイング鍛錬。生きることすべてがアートな方でした。

Bb

 2016年に大和郡山で延べ6日間にわたり千点の絵画を描いたプロジェクト(実際には1,028点制作)から、276点を展示。形状や色、サイズや画材、質感も技法も実にさまざまな作品が、壁にも床にもあふれている。作品リストによれば多い日は67点も制作。スピードと量を重視する創作哲学とはいえ、凄まじい集中力と瞬発力だ。

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       あたりまえのことをしていけば   
       あたりまえでなくなり    
       やがて 力となる
                Sadaharu Horio

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 「あたりまえのこと」を表現し、その場に沿った「空気」を可視化するためのいろんな美術表現に挑み続けた堀尾貞治。そして、ついにたどり着いた「表現を捨てることが自己の表現」という境地から、呼吸するように生み出された作品群は、長年の創作鍛錬の賜物です。この精力的な活動が、77歳のときだったとは驚きです。

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 なお、この展覧会は NHK-Eテレの「日曜美術館 アートシーン」で放映されることが決定したそうです。ぜひテレビで観てください。ぜひ会場へ足を運んでください。人生の中心に美術を据え、生涯をかけてアートを追求した堀尾さんの熱い想いが伝わると思います。

堀尾貞治
あたりまえのこと
千点絵画
2023年10月17日(火)~12月24日(日)
BBプラザ美術館

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