2019年7月15日 (月)

グッバイ、Mr.レッドフォード

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 スポーツ選手は肉体的衰えや精神的疲労から思うようなプレイができなくなったら、現役を引退せざるを得なくなる。でも俳優が引退宣言するって、珍しいのではないでしょうか。病気とかでなければね。ロバート・レッドフォード、82歳。年齢を重ねても、「まだまだ」というか、「ますます」というか、カッコよくて仕事の質も上がっているのに。いい年の取り方のお手本でした。俳優業は引退しても、監督業やプロデューサー業は末永く続けてくれることを期待します。

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 初めてロバート・レッドフォードを観たのはアメリカン・ニューシネマの傑作『明日に向かって撃て!』(1969年)。犯罪者なのに、さわやかでユーモアがあって知的なサンダンス・キッド役が、それまでのハリウッドにはなかった鮮烈な個性を輝かせていた。そして最後になるのが『さらば愛しきアウトロー』のフォレスト・タッカー役。どちらも実在の銀行強盗。本人もアウトローを演じるのが好きだと言っているし、俳優人生を締めくくるにはこれほどふさわしい作品はなかったのかもしれません。

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 時代はちょっとレトロな1980年代。舞台はのどかな中西部の田舎の町々。礼儀正しくジェントルな老人が、誰ひとり傷つけず微笑みながら繰り返す銀行強盗。犯罪者なのに凶悪なイメージとはいっさい無縁で、被害を受けた銀行の担当者たちでさえ夢を見ているよう。そして追っかける刑事まで魅了されていく。ほぼ真実の物語、とクレジットされたこの作品。不思議なキャラクター「黄昏ギャング」を肩の力が抜けた名演技で表現したレッドフォード。これも彼の代表作の一つになるでしょう。



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 この映画は犯罪者を主人公にした作品だけれど、派手なアクションや緊迫した展開で見せるのではない。彼が主演するだけのことはあって、情感に満ちた穏やかな映画に仕上がっている。気のきいたセリフ、美しいトーンの映像、時代の雰囲気を再現したデビッド・ロウリー監督の演出が素晴らしい。そしてケイシー・アフレックやシシー・スペイセクら共演陣も見事な演技で大スターの去り際を支えている。スポーツの名選手の引退を胴上げで送る感じ。それにそれに、劇場のお客さんの入りもよくて、うれしくなりました。

 

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2019年7月12日 (金)

ヤングコーンで知ったこと

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 この時期だけのヤングコーンあるいはベビーコーン。と書きましたが、この時期限定というのはつい先日知ったばかりです。店先でヤングコーンと表示された野菜を初めて見かけたのです。ヤングコーンは小さいながらもコリコリした食感がおいしい。中華料理の野菜炒めや焼きそばにはいつでも入っているから、初夏の一時しかないとは思いもしなかった。あれはどうも缶詰だったらしい。

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 買った店で食べ方を聞くと、「皮付きのままレンチンしても、オーブントースターで焼いてもおいしいですよ」とのこと。両方試してみましたが、どちらもおいしい。甘さはまだ弱いけれど、ちゃんとトウモロコシの味がする。しかも中でびっしりと実を包んでいるヒゲまで食べられる。そのままで、醤油バターで、オリーブオイルと塩コショウで。甘さより、新鮮な初夏の香りが魅力です。

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 よく食べるトウモロコシとは品種が違うのか、と思って調べてみました。そうすると盛夏に出回るいわゆるトウモロコシの未熟果だとわかった。いくつもできる実を摘果して、それぞれの茎で2本だけを大きく育てて出荷するのだそうだ。栄養分をそこに集中させるのか。ではトウモロコシはどんなふうにできるんだろう。そういえば知らない。信州をクルマで走っているとトウモロコシ畑かな?と思うところはあるけれど、実ができているのを見たことがない。あれはきっと家畜に食べさせる飼料用だろうと思い込んでいた。

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 でもススキのようなあれがトウモロコシだったのです。ただし雄花。雌花が実をつけ食用になる部分は、じつは先端ではなく茎の下部にできるというのだ。意外でしょ。米も麦も茎の一番上に実がなるから、トウモロコシもきっと先端に実があるハズ。これが間違いだった。中南米原産、コロンブスがヨーロッパに持ち帰り、世界中に広まった主要穀物。よく食べているのに何も知らなかった。お恥ずかしい限りです。

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2019年7月 9日 (火)

長場 雄の、おもしろ視点

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 すべての線は、名画に通ず。これは POCKET ART SERIES NUMBER ONE 『 YU NAGABA 』(株式会社オークラ出版)のオビに書かれた言葉だ。ベースは「全ての道は、ローマに通ず」。この言葉がすごく輝いているのは、この本がダ・ヴィンチやボッティチェリからキース・へリングやバスキアまで、誰もが知っている古今の名画を味のある線で描いたドローイング集だから。アーティスト長場 雄の自信。

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 ポケットに、手のひらに、いつも持ち歩いて、思いついたら開いて楽しめる。ページをめくりながらユニークな選択にクスッとし、省略のセンスにうなり、線の美しさにうっとりする。極限まで要素をそぎ落としたシンプルな表現なのに、元になった名画の色や深みがしっかり伝わってくる。これは並外れた才能とテクニックのなせる業。

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 いろんな名画が描かれているのに、モネの睡蓮は入っていない。たしかに、あんな絵は線では表現できないですよね。線で表現するのには得手不得手があるようです。でもクリムトやマネはちゃんと出ている。しかも一目でそれとわかる。「あ、なるほど!」、「こんどは、そう来たか」。目の栄養、プラス 頭の体操。ミケランジェロもマチスも、もう楽しくて中毒になりそうです。

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 誰もが知っている、あるいは知らなくても見たことはある、そんな有名なアート作品を独自のスタイルで表現する。これは過去の芸術にもう一度命を吹き込む作業だ。しかも美術の教科書を見るような堅苦しさがなく、すごい芸術作品にお近づきになる入口の役目。アートをもっと身近にしたい、という長場さんの思いで生まれた手のひらサイズの美術書。ぜひ一冊お手元に。

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