2020年10月29日 (木)

権威に逆らうプロジェクト

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 声高に平和を訴えるのではない。戦争のバカバカしさをユーモアで包み、観客に武力の無力を思い至らせる。そしてあぶりだされるのは政治や宗教の権威主義に隠された不都合な真実。それがバンクシーの流儀。爆弾を抱く少女も、ピンクのリボンをつけた戦闘ヘリも、強くアピールするのは可愛さと不気味さが同居しているから。

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 パレスチナのベツレヘムはヨルダン川西岸にあり、キリストの生誕地でもある。いまは町の周りを壁が囲っている。イスラエル人の入植地とパレスチナ人の居住地域を分断する壁。2017年3月20日、この壁の真ん前にザ・ウォールド・オフ・ホテルが開業した。2005年ごろからこの前の遮断壁に風刺画を描いていたバンクシーも出資、協力する、泊まれるアートプロジェクト。

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 客室からは遮断壁しか見えないので、「世界でいちばん眺めが悪いホテル」。内部には彼の作品がたくさん飾られている。あるベッドルームの壁面には、羽毛を飛ばしながら枕を武器に戦うイスラエル兵とパレスチナゲリラ。この部屋と電飾看板が、展示会場に再現されている。パレスチナの歴史や地元アーティストの作品が見られるギャラリー&ミュージアムもホテルに併設されているそうだ。

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 ストリートアートや版画から発展し、映像作品やインスタレーションやイベントまで活動の幅を広げるバンクシー。しかも世界各地の街角に神出鬼没に表れてその作品を残す。そんな多面的な彼の足跡、多才な痕跡をマルチスクリーンで見せてくれる映像展示も面白い。アートの最前線を走って美術家だ、と再認識しました。

バンクシー展 天才か反逆者か
2020年10月9日(金)~2021年1月17日(日)
大阪南港ATC Gallery(ITM棟2F)

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2020年10月26日 (月)

作者非公認の展覧会?

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 アーティスト本人は非公認? 無許可の展示イベント? しかしほとんどの作品は本物! なんとも奇妙な展覧会が世界で話題になっている。大阪南港ATCギャラリーで開催中の『バンクシー展 天才か反逆者か』。バンクシーは英国を拠点に街角のビルや壁に社会風刺や政治的メッセージを描く、正体不明のストリート・アーティスト。いま世界で最も注目されている美術家です。

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 街中で人に見つからずに描くストリートアート、いわば落書き。すぐに当局に洗い流されたり、塗りつぶされたりするから、後に残らない。彼自身も犯罪行為だと思っているからか、決して名乗り出ない。なぜこの展覧会が作者非公認なのか、の理由のひとつがこれ。でも著作権や金銭的な問題はどうなるのだろう?

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 ところが有名になるにつれ壁を剥ぎ取って残す人や、オリジナルの版画を買う人があらわれる。こんなコレクターが持つ作品を約70点、世界中から集めてきて開催にこぎつけた展覧会が、このバンクシー展。モスクワ、サンクトペテルブルク、マドリード、リスボン、香港、横浜と巡回して、今月いよいよ大阪へやってきました。

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 反戦。反ファシズム。反帝国主義。反権威主義。反消費社会。反資本主義。反原理主義。彼は社会のいろんな場面で人間を圧しつけるパワーに反発し自由を求める。警察、エスタブリッシュメント、監視社会などを風刺したユーモラスでブラックな表現を見ると反逆者。いま世にある問題の本質を伝える能力を考えると天才。バンクシーはアートの力で権威に反逆する天才なのです。

バンクシー展  天才か反逆者か
2020年10月9日(金)~2021年1月17日(日)
大阪南港ATC Gallery(ITM棟2F)

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2020年10月23日 (金)

40歳のラッパーって変ですか

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 黒人で、女性で、40歳を間近にひかえた脚本家。まだいろんな差別がはびこっている演劇や映画の世界で、なんとか活躍したいともがく彼女の日々を描いた『40歳の解釈:ラダの場合』がおもしろい。監督、脚本、製作、主演を務めたのがラダ・ブランク。自身の実体験をベースにした痛々しいストーリーをコミカルに語りかける。

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 かつて「30歳未満の30人」に選ばれ、脚本賞のトロフィをもらったこともある。それがキャリアのピークで、後はぱっとしない。ワークショップで若者に教えているが、先生は10年前の作品が最後ねとバカにされる始末。大物プロデューサーに妥協しまくってやっと舞台が実現するが、自己嫌悪に陥ってしまう。そろそろ限界か。

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 人種やジェンダーの壁。年齢的にも曲がり角。仕事も思い通りにならない。そんな絶望的な状態のときに、ラップに出会って真の自己表現に目覚めていく。40歳の視点で自分に正直な言葉をラップのビートにのせて。ダイエットドリンク片手に社会の無理解に挑む姿は、マイノリティにとって希望の星か。NETFLIXの作品です。 

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