2020年1月27日 (月)

日本が誇る竹工芸アート

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 竹を素材とする工芸と言えば、カゴやザルを思い浮かべますね。建築資材としてもよく利用されていました。どこにでもあって手に入れやすい材料。しかも軽い、曲げやすい、しなやかな強さがある、といった特徴が生かされ技術もデザインも高度に発展。ところがプラスチックが世に現れると、あっという間に使われなくなり、身近な生活から姿を消していく。その結果、竹林は荒れ放題。山の環境も破壊されるようになってきた。役立つ資源が、厄介者に。

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 東洋陶磁美術館で開かれている「竹工芸名品展」が素晴らしい。アビー・コレクションからセレクトされた近現代の名品75点。2017年から18年にかけてメトロポリタン美術館で開催された『 Japanese Bamboo Art : The Abbey Collection 』をもとに再構成した展覧会だそうだ。竹の文化が根付いた大阪の地で、ダイアン&アーサー・アビー夫妻が収集した世界屈指のコレクションが鑑賞できるとは。日本人作家の技量、美意識、革新性に誇りを感じます。

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 ちょっと残念なのは、その魅力の発見者は海外の人だったということ。いつものことながら逆輸入というカタチでしかその良さがわからない、気付かない私たち。もう少し見る目を養い、素直に良いものは良いと評価できるようになりたいものです。今回の展覧会を観て心強く感じたのは、いまも伝統の技術を継承し進化させている作家さんがいるということ。まだまだ希望があります。私たちも竹製品を暮らしに取り入れる美学を持ちましょう。

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 プラスチックなどの工業製品に比べて高価すぎる竹。だからといって消えてしまうには惜しい魅力と技術です。その意味で近年アートの素材として竹が見直されてきたのは、とても良いことだ。竹ならではの軽やかな造形表現が、金属や石や木とは違う新たな味と魅力を生み出す。極めて細かい精緻な細工から巨大なインスタレーションまで。柔軟な竹を活かす文化は、漆と並んで日本の誇り。いつまでも続くことを願います。

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竹工芸名品展
ニューヨークのアビー・コレクション
メトロポリタン美術館 所蔵
2019年12月21日(土)~2020年4月12日(日)
大阪市立東洋陶器美術館

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2020年1月24日 (金)

10歳が見つめた偏見

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 第二次世界大戦下のドイツが舞台。という前触れで見に行ったら、いきなりビートルズの『抱きしめたい』(ドイツ語バージョン)が鳴り響いて驚いた。タイカ・ワイティティ監督は天才だ。この一発で観客の心を鷲づかみにするのだから。主人公は10歳の少年、いやまだ少年にもなっていないガキンチョだ。未熟で無知で弱虫で、そのくせ勇敢な兵士になりたいと夢想する。感じやすい、感化されやすい子供にとって疑う余地はない。ま、そんな時代だったのですね。

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 きっとわが日本にもこんな純粋無垢な軍国少年がたくさんいたのだと思います。この10歳が見た戦時下の生活を、映画『ジョジョ・ラビット』は描く。子どもから見ると優しく勇敢な母親も、少年少女にナチス的教育を指揮するヒトラーユーゲントの隊長も、わからないことだらけだ。彼に寄り添い親身になってアドバイスをくれる(空想の中の)友人は、なんとアドルフ・ヒトラー。笑えるでしょ! 演じているのは監督のタイカ・ワイティティ。才人です。

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 困ったことに、時代にマインドコントロールされた彼が、ふとしたことでユダヤ人の少女に出会ってしまう。得体のしれない最悪の敵? はてさて、彼はどう折り合いをつけるのか。自分の眼で認め、自身の頭で考え、少しずつユダヤ人に対する偏見から解放されていくジョジョ。しかし社会の同一性から逸脱する危険も同時に知っていく。成長と勇気。愛と哀しみ。これらの微妙な感情をみずみずしく演じたローマン・グリフィン・デイビスが素晴らしい。未熟で無知なガキンチョ、などと失礼いたしました。

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 1975年ニュージーランド生まれの監督は重くなりがちなテーマを明るくコミカルに描いている。見事なヒューマンエンターテインメント。ナチスや、戦争や、人種差別を、シリアスに描くだけではうまく伝わらないと考えたのではないでしょうか。時代の熱狂。集団的な狂気。「偏見は作られたもの。憎しみより、愛を」。 世界で再び人種差別やヘイトスピーチを叫ぶ勢力が増えつつある現代だからこそ生まれた映画であり、深く伝わるメッセージだと思います。 

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2020年1月21日 (火)

知的探求から実利の開発へ

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 はるかかなたの宇宙の果て。はるか昔の宇宙の起源。それらを知りたいと願う欲求は、人間が本能的に持つ好奇心でしょうか。あの山の向こうには何があるのだろう?あの雲の上はどうなっているのだろう?と思う気持ちの延長から、科学が生まれ、天文学が生まれ、ついに地球外の天体に一歩をしるす。1969年、アポロ11号のニール・アームストロング船長が月面につけた足跡の写真が、『138億光年 宇宙の旅』会場の床に展示してありました。安全のためか、宇宙服のブーツはデカい!
 
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 あれから半世紀。宇宙は知的探求の対象から、実利的なフィールドへ変質。ロマン主義からリアリズムへ。資源開発や軍事的利用、はたまた人類の移住の可能性まで視野にとらえるようになりました。たしかに火星の写真の数々を見ていると、水もあるから極地に氷が張っている。風も吹いて砂漠のような風紋ができている。つまり空気があるということ。これまた人間の本能として、領土争いや開発競争が勃発しても不思議はない。人類が学習してきた理性で、なんとか公正なルールを打ち立ててもらいたいものです。火星まで乱開発や戦争で住めなくなるのはゴメンだ。

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 2012年6月、太陽観測衛星SDOが撮影した美しい写真。燃え盛る太陽の前をシルエットに見える金星が通過していく様子です。6時間ほどの動きを撮った画像を合成したものだという。金星の太陽面通過は珍しい現象で、次に起きるのは2117年。こんな話を聞くと、やっぱり宇宙ってロマンだと思いませんか。遠い遠い宇宙もあれば、ご近所の月や惑星の太陽系もある。遠くの憧れである限りは美しく神秘的。手が届くようになれば利害が絡んで争いの元。人間の欲望は宇宙まで呑み込んでしまうのでしょうか。恐ろしい。

138億光年 宇宙の旅
― 驚異の美しさで迫る宇宙観測のフロンティア ―
2019年12月21日(土)~2020年2月2日(日)
明石市立文化博物館

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