2017年8月23日 (水)

ボローニャ絵本原画展

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 今年もボローニャ国際絵本原画展が西宮の大谷美術館で始まりました。さまざまな国のそれぞれ固有の文化・社会的背景を持ったアーティストたちが表現する絵と物語世界。毎年とても興味深く見せてもらっている。その技法もアクリル、グアッシュ、色鉛筆、コラージュ、刺繍、スタンプなど多彩だ。最近の傾向としては、デジタル技術がいろんな局面で使われていることが挙げられる。アイデアをカタチにしやすいことに加え、あとの出版への便利さも優れていて、デジタル化は時代の流れでしょうね。

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 絵本の原画だから、小さい子にも理解できる内容であるべきだ。しかし、社会常識という固定観念に縛られる前の子どもには、柔軟で自由な空想力という武器がある。それによって瞬間的に大人よりずっと深く本質を理解することもあるのだ。絵本を作るってほんとうに難しいと思う。子ども向けだからって馬鹿にしてかかると、逆に子どもに馬鹿にされる。ここには幸いそんな駄作はなく、力のこもった作品ばかりだ。

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 イタリアやフランスをはじめ、ハンガリーやリトアニア、イランや台湾、ブラジルやコロンビアなど61ヵ国3,368の応募から、日本人6名を含む26ヵ国75作家が入選。さすがにどの作品もお国柄や作家の個性などオリジナリティ豊かで、じっくり楽しみながら鑑賞できる。5点組の展示なので、ある程度のストーリー展開も想像できる。(子どもには負ける?) 
 小学生でしょうか、10歳ぐらいの子が何人もひそひそ話したりメモを取ったりしながら鑑賞していました。夏休みの課題になっているのかも知れません。楽しそうでした。


2017イタリア・ボローニャ国際絵本原画展
西宮市大谷記念美術館
2017年8月19日(土)~9月24日(日)

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2017年8月20日 (日)

アイルランドの美しいアニメです

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 世界で最も美しい本と言われるのが、アイルランドの国宝 『ケルズの書』。この実在の装飾写本をめぐる少年修道士ブレンダンの冒険を描いたファンタジーが、トム・ムーア監督のデビュー作「ブレンダンとケルズの秘密」です。Photo ちなみに昨年公開され話題作「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」は、この後に作られたムーア監督の第2作目。
 舞台はバイキングの襲来におびえる9世紀のアイルランド。ケルト文化特有の渦巻きの文様、森の動物や植物、妖精や伝説の怪物があらわれる物語世界。なにより絵の魅力と演出のテクニックが斬新な、見たこともないアニメーション映画です。そしてこの映画は、ある国・地域の固有の文化を掘り下げた優れた表現は、人類共通の宝物であり世界に通じる普遍性を獲得するということの、すばらしい証明でもあります。

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 絵はディズニーやジブリのように洗練されていない。人物も紙を切り抜いたようなペラペラな表現で、顔と体の向きもヘンだ。森の木々も型紙をペタペタと置いていったような類型化の繰り返し。でもこれは下手なのではない。あえて平面的に、装飾的に、文様的にしているのだ。きっと絵画技法を歴史的に研究した賜物の表現で、東方教会のモザイク画やイコンを彷彿とさせる。すごく美しい。説得力がある。新鮮な感動を与えてくれる。これ、決してほめすぎではありません。

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 9世紀の出来事を、まだ透視図法が発明される前の中世絵画を意識した画法で描く。とても論理的に考えられている。輪郭線を強調しているのも効果的だ。そして光と影の表現もうまいし。そしてスピード感がある21世紀ならではの演出で、最後まで一気に引っ張っていく。新たな才能との出会いでした。
 アイルランド・・・緑色がナショナルカラーで、クローバーがシンボルで、セント・パトリックが守護聖人の国。素晴らしい音楽と相まって、これ以上のアイルランド賛歌は作れないでしょう。そしてまだまだ発展するアニメの表現、その可能性は限りないと思いました。

Secret of Kells
ブレンダンとケルズの秘密


 

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2017年8月17日 (木)

世界報道写真展が指し示すもの

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 もう終わりに近いが、「世界報道写真展 2017」が梅田のハービスHALLで開催されている。報道写真は世界を映し出す鏡。戦争やテロ、難民や貧困などをテーマにした作品がじつに多い。たしかにこの一年のニュースを振り返ってみても、シリア、IS、イラク、ソマリア、リビアをはじめ、心が痛む悲惨な出来事をたくさん思い出すから当然か。なんか他人事のような言い方しかできない自分が情けないけれど・・・。
 悲劇の本質を一瞬に伝えるシンボリックな作品は、いい報道写真の王道だ。まさに百聞は一見に如かず。しかし、そんな作品を撮るためには、その場にいないといけない。そのために毎年何人かのカメラマンが犠牲になるのも心が痛む。

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 アメリカ・ルイジアナ州で黒人青年が警察官に射殺された。その抗議デモで、警備の警官隊の前に静かに立ちふさがる女性。場違いとも思える優美なドレス、その毅然とした姿は見るものに感動を呼び起こす。暴力には暴力を、という連鎖を断ち切る力強いメッセージが込められている。根深い人種差別の風土を変えるのに武力はいらない。武装した警官隊に、あえて丸腰を強調するコスチュームで。天安門事件で戦車の前に立ちふさがった青年を思い出しました。報道写真の枠を超えて、本当にすぐれた作品だと思う。

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 以前に比べて少し減ってはきましたが、環境問題、野生動物保護をテーマにした作品もがんばっている。捨てられた漁網が絡まったまま泳ぐウミガメ。猛吹雪のあと地面を埋め尽くすチョウの死骸。密猟者の犠牲になったサイ。
 報道写真という性格上、どうしても暗く、重く、深刻な作品が多くなるのは仕方がない。普通で平凡で幸せなシーンはニュースにならないですからね。でも、だからこそ、一目見ただけで気持ちがパッと明るくなる、楽しくなる、勇気づけられる、そんな写真を撮れるカメラマンの出現を待っています。そして新聞やテレビに取り上げられて報道写真展で入賞する時代が来ることを!

変えられた運命
世界報道写真展 2017
2017年8月8日(火)~8月17日(木)
【大阪展】 ハービスHALL

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