2019年12月10日 (火)

忠臣蔵は、お金次第?

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 12月14日の討ち入りを前に、恒例の忠臣蔵。でも今回はちょっとユニークな視点からの映画です。中村義洋監督の『決算!忠臣蔵』。浅野内匠頭の刃傷沙汰から吉良邸への討ち入り。泰平の世に主君の仇討ちを果たした武士の鑑として、もてはやされた47士。しかしその実態はソロバン勘定に明け暮れた日々⁈ 殿が切腹、藩がお取り潰し。ま、現代に置き換えると会社が倒産したようなもの。全員リストラにあった浪人なのですから。

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 何をやるにしてもお金は必要。それは今も昔も変わりません。このお話が上手いのは、そば一杯の値段を基準に換算し、すべての経費を現代の価値に置き換えているところ。赤穂から江戸への出張費が36万円。弓×4が42万円。たいまつ10本で10万円。鎖帷子、手甲、脛あてなどの武具が人数分で960万円。討ち入りにはお金がかかるのだ。失業してからの生活費に食費に家賃と、どんどんがかさんだ出費に加えて討ち入り費。予算がピンチ。

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 主演の堤真一と岡村隆史の演技が素晴らしい。すぐかっとする家老の大石内蔵助。淡々と仕事をこなす勘定方の矢頭長助。登場人物がみんな関西弁でしゃべるのもすごくいい。なんでやねん!と思われますか? 彼らは赤穂の人だから関西弁が自然ですし、世知辛いお金の話をするのにもよく合っている。吉本興業が制作に協力しているから、というのもあるでしょうね。

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 ウイークデーの昼間にもかかわらず、劇場はかなり混みあっていました。史実に基づいた忠臣蔵の裏話。なにかとお金かかるんだよなぁ、節約しても。観客の多くは年金生活とおぼしき皆さん。さぞ身につまされたことでしょう。歴史学者、経済学者が書いたおもしろい原作が増えたせいか、参勤交代や藩の引っ越しなどをテーマにしたユニークな時代劇が近ごろ多くなりました。その流れも汲んで新たな傑作コメディ忠臣蔵の誕生です。

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2019年12月 6日 (金)

旧・南蛮美術館の逸品

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 まじわる文化、つなぐ歴史、むすぶ美 ― というキャッチフレーズで、神戸市立博物館が約2年をかけたリニューアルを記念して『神戸市立博物館名品展』を開催している。教科書にも出ている有名な聖フランシスコ・ザヴィエル像。長崎の出島にもコピーが飾ってあったが、所蔵しているのはここです。もともと神戸の資産家・池長 孟(いけながはじめ)がコレクションし、1938年には熊内町にアールデコ調の美術館まで建てて展示していた作品。その美術館は戦後に大量の所蔵作品ごと神戸市に寄贈され、1982年まで市立南蛮美術館という名で親しまれていた。


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 1982年に旧横浜正金銀行の建物を活用した市立博物館の開館。それに合わせてこちらに移されたコレクションが今の市立博物館の中心です。国内に何点か残っている南蛮屏風の中でも質が高いこの作品は、狩野内膳による桃山時代のもの。ほかにも神聖ローマ皇帝、トルコ皇帝、モスクワ大公、タタール王を描いた泰西王侯騎馬図屏風も素晴らしい。宣教師の教えを受けた日本人絵師が西洋の画法と和の技法を折衷させて完成したおもしろい作品です。

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 神戸の歴史に因んだ展示物は、市立考古館から引き継いだ作品が中心だ。1964年に宅地造成中の灘区桜ヶ丘で出土した国宝の銅鐸(どうたく)14点と、銅戈(どうか)7点。2千年前のモノが状態よく残っている。楽器だとか祭礼用だとか、その用途はいまだ謎のようですが。我が家から歩いて行ける桜ヶ丘にそんなお宝が埋もれていたとは意外です。源平合戦図や近代のブルーム氏個人アルバムまで、神戸のさまざまな時代を垣間見ることができるリニューアル記念の名品展。主な作品は新しくなったコレクション展示室でこれからも見ることができます。

まじわる文化、つなぐ歴史、むすぶ美
神戸市立博物館 名品展
2019年11月2日(土)~12月22日(日)

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2019年12月 3日 (火)

実録!奇跡のテノール

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 Time to Say Goodbye を世界的に大ヒットさせたテノール、アンドレア・ボチェッリ。神の声を持つといわれるまでになった盲目の歌手が自ら執筆した自伝『The Music of Silence』に基づく映画『アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール』が素晴らしい。イタリア語の原題は『la  Musica del Silenzio』、そのままですね。盲目という大きなハンディを克服して世界のスターになるまでには、私たちに理解できない闘いがあったはず。それにあのズッケロも出演していますよ。

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 この映画の監督は名作『イル・ポスティーノ』のマイケル・ラドフォード。駄作であるはずがない。最後は成功するとわかっているのに、つい応援していました。心が揺さぶられる感動物語です。最映画の中でボチェッリ本人が熱唱する(吹き替えです)歌には圧倒されます。「乾杯の歌」(『椿姫』より)、「星は光りぬ」(『トスカ』より)、「誰も寝てはならぬ」(『トゥーランドット』より)などなど。圧巻の歌唱に涙が出ます。人を感動させるとは、こういうものなんだ。

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 映画を見て思うのは、周りの人たちにも恵まれていた、ということ。両親をはじめ、叔父さんや親戚、友人や恋人、学校の先生や歌のマエストロ。苦悩の中でも希望を失わずに前進できたのは、あたたかいサポートがあったからこそ。アンドレアに限らず、誰でもみんなに支えられて生きている。この映画は特別な才能を持った人の物語には違いないけれど、一人だけでは生きられないという事実は普遍的だと思う。改めて世界に感謝したいと感じました。

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